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狼、ウサギに嫉妬する(オマケ)
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「ん……」
あの後気を失ってしまったのか、ゆっくりと目を開けて瞬きをいくらか繰り返して行けば、次第に意識は覚醒していく。
衣服はいつの間にか整えられており、貴文がどうやら事後の処理もしてくれたようだった。
自分は今、自室のベッドの上で。
ふいに辺りを見渡して見るが、 先程までいた筈の愛しい人がいないのだ。
もう帰ったのだろうか?
一声掛けてくれても良いのに…そんな思いが募るが、如何せん自分は気絶していたのだから、言える言葉は何も無いのだが。
ふと、縛られていた手首を見てみる。
良く見れば擦れたそこは赤く腫れ上がり痛々しかった。あれほど乱れたのだ、仕方ないだろう。
「うわぁ、オレ…なんて。あー恥ずかしい」
先程の行為を思いだし、一人悶々と紅くなった顔を隠す。
その時、「ガチャ」と音と共にドアを開ける音が聞こえ、足音が此方へと近付いてくる。そちらへと視線を移して、誰かと確認するようめを向けた。
「あれ、起きてたの?まだ寝てるかと思ってた」
もう帰ってしまった、そう思っていた筈の彼は、どうやら出掛けていたらしく片手にスーパーの袋らしき物をぶら下げて、驚いた様子で自分を見る。
それを見ていた自分もきっと、驚いた様子で目を見開いて馬鹿みたいな顔で貴文を見ているのだろう。
「今さっき起きたところ。貴文居なかったから、もう帰っちゃったのかと思ってた」
起きた瞬間、いて欲しい筈の人が目の前に居ないというほど寂しく感じる事は無いだろう。
「寂しかった?挨拶も無しに帰らないよ、起きていたのは予想外だったけど。今日は泊まって行こうかと思って、買い出しに行ってた」
不器用にも優しい言葉を言えば、持っていたスーパーの袋を掲げ、不安そうに自分へと伺う晴人へと、笑みを穏やかにして安心させる。
「それよりも…さっきは痛くしちゃってゴメンね」
晴人が居るベッドへと近付いて腰を降ろす。尽かさず、赤く晴れがった手を優しい手付きで撫でたと思えば、ちゅっとリップ音をたててキスをする。
「…あ」
予想外の行動に小さく甘い声を漏らす晴人。
今日は泊まるつもりだとか、袋の中身は一体何なのかと、質問したいことは沢山有るのに、甘いその空気に圧倒されて胸がそれで一杯になっていく。
「オレ…貴文がさ、ほらさっき…あんなこと言ってくれるなんて、夢にも思って無かったんだ」
自分の今の気持ちを言うなら幸せ一杯。
嫉妬は愛の証なのだ。だからこそ、胸一杯にそれが広がって、苦しさの余り泣いてしまいそうだった。
「嫉妬の事?…僕だって嫉妬の一つや二つするよ。無自覚な晴人は、そんな僕の気持ちを知らないで周りを魅了して…だから心配なんだ」
いつもは凛としていて、心を乱したりもせずクールな貴文。しかし今はどうだろう?表情を崩して眉を下げて苦く笑っている。この表情は、自分がさせたものなのだ。滅多に見ることの出来ないその一面。
考えれば考えるほど、胸が締め付けられる。
「ふぇ…ごめんね…でもっ、今凄く嬉しくて…っ」
泣きそうだった、だけど今は堪えきる事も出来ずに泣いていた。目元に涙を溜めて、それが流れ落ち、頬を伝って下へと落ちていく。
小さく漏らす嗚咽、貴文がそっと頬へと流れる涙を優しく拭った。
「何泣いてるの、泣き虫なんだから」
「…っ、だって」
言いはなった言葉は冷たいかも知れないが、優しい仕草に涙は止まる事を知らない。
些細な事なのだ、だけどそれがすべて嬉しくて、好きなのは自分だけじゃない。貴文だって、晴人を好きなのだと言われたようなものなのだ。
泣かずにはいられない。
「もう、泣かないの。まったく…可愛いんだから」
涙を拭うその手が晴人の唇をなぞり、近付くお互いの顔。次の瞬間、触れるだけのキスをかわされる。
「…約束してくれる?嫉妬は余りさせないって」
何て難しい課題だろうか。
無自覚だと知っていて、そう告げる貴文は意地の悪い笑みを見せてる。
「難しいけど、がんばる…っ」
単純な自分は逆らう事は出来ないのだ。
返事と共に不意に抱き締められ、腰に手を回す貴文。暖かい体温が晴人の身体を包む。自分もまた、返すように抱きしめ返した。
「いい子だね、好きだよ」
片方の手が頭を撫で、また溢れていく涙。
貴文の服が濡れたかも知れない。
だけど、今の自分にはそれを気にしている余裕など微塵も無く、ぎゅうっと力を込めて甘えるようにすがり付いた。
「…オレも、大好き」
泣きすぎて鼻声になった不細工な声で、言い返したのだった。
狼、ウサギに嫉妬する(オマケ)完
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