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第3話 狼は、ウサギのもの
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午前中の授業も終わり、後半戦である午後の授業が始まるまでのお昼休み、男子校ならではの男気臭い声音が、クラスの空気を暑くさせる。
季節はもうすっかり秋へと変わろうとしているのだが、秋になる兆しはまだ見えてはいない。
そんな中、一人声も挙げずに難しい顔をさせている生徒が一人。
空いた窓から流れ込む風は、惜しむことなく彼のパーマ掛かった猫っ毛をふわふわと揺らしている。
その本人である晴人は、机の上で肘を付き、ただボーッと何かを悩んでいるのか上の空だ。
わずかに寄った眉間の皺が、今の状況を分り易く醸し出していた。
元気だけが取り柄とも言える晴人のこと。何時もなら、お昼ご飯だと喜んではしゃぎ回るのだが、どうにも今はそんな気分では無かった。
「あー…うーんー…はぁぁっ」
難しい顔をしたかと思えば悩んだ挙げ句の果て、盛大に付く溜め息は何処か重たく哀愁が漂っている。端から見れば恋患いしてるようにも見えるだろう。
そんな傍らで、その光景を見ていた友人が堪らなくなったのか、忙しくも表情をころころ変える悩める男子に声をかけた。
「…おーい、はるちゃん。帰ってこーい」
「えっ、あー…かず。…いたの?」
心、此処に在らずとは言うが、まさに今の晴人はそれだった。
自分の存在すら気づいていなかったのかと、内心傷つきながらも、ぐっと心に仕舞い込み、今は友人の為と開き直る。
そんな当の本人は返答こそあったものの、出した声に覇気が見当たらない。
相当悩んでいるようだ。
かずこと和成(かずなり)は晴人が高校に入学する前からの友人で、親友とも呼べる間柄だ。当然の事ながら仲が良く、困ったときには相談相手にもなってくれる優しい友人なのである。
スポーツマンチックで爽やかな整った顔が、何かを悟ったように、口を開く。
「その悩みよう…またあいつの事か?」
彼の悩む相手など一人しかいない。晴人を良く知る和成には、どんな難しい難題よりも簡単に謎は解けた。それほど分かり易いのだ、この友人は。
「えっ?う、うん…さすが、かず」
自分に悟られた事が図星だったからか恥ずかしかったのか、うっすらと赤く染まっていく晴人の頬。
それを笑うように、にんまりと口元を緩ませて茶化すように、軽く肩を肘でぐいぐいと攻撃する。
「うわ、もう、ちょっとー!こっちはけっこう真剣なんだからねー」
「ごめんごめん。はるちゃんの反応が可愛くてさぁ」
「えぇー可愛いって…。うれしくないんですけど」
唇を尖らせてぶつぶつ文句を言う晴人。それが可愛いって言うんだよ、バーカ。と、更に笑われたのは言うまでもない。
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