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Love is in danger4
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「俺はどんなことがあっても、見捨てたりしません。陽さんをはじめて抱いたあのときに、この人とずっと一緒にいなきゃって決心したんです」
「雅輝……」
宮本は小さな呟きに反応するように、橋本の左手を両手で握りしめた。
「陽さんを抱いたから、結婚という形で責任を取るんじゃない。責任を取りたいから抱いたんです」
「知ってる。お前の責任感の強さが分かっていたから、俺は進んで自分を提供したんだ」
握りしめられる左手から、じわりと伝わってくる宮本の温もりを感じつつ、その片手を強く握り返した。
「さすがですね。やっぱり陽さんには敵わないな」
自分の気持ちを吐露しながら、くしゃっと破顔した宮本の表情から、やるせない感情が見え隠れした。口角を上げて笑っているのに、橋本を見つめる瞳が一切笑っていなくて、心の不安定さを示すようにゆらゆら揺らめく。
(目は口ほどに物を言うっていうのは、本当だよな――)
「雅輝、聞いてくれ。俺はお前との付き合いを、真剣に考えてる。雅輝が好きだから。これは俺の本心だ」
「うん――」
「ただ結婚となると話は別だと思う。お前の実家に挨拶した、弟のこともあるだろ。ショックを受けてるところに俺が顔を出したりしたら、ご両親の心の傷が――」
「ちょっと待って! 佑輝や親のことがどうでもいいわけじゃないけど、今は陽さんの気持ちが知りたい。俺と結婚したくないの?」
「なんで、そんなに結婚にこだわってるんだ。おかしいぞ、お前!」
宮本の怒気に負けない大きな声で返事をした途端に、両手で包み込まれていた左手が離されてしまった。すると橋本が掴んでる宮本の右手が露になり、縋りついているようなそれをふたりで黙ったまま見つめた。
「ごめんね……。俺また、ひとりで突っ走っちゃったみたいだね。別に、結婚にこだわってるつもりはなかったんだけど」
掴んでいる宮本の右手は開かれた状態で、橋本の手を握ろうとはしなかった。
「そうさせてる原因を、俺が作ってるのかもしれない。すまなかったな」
「陽さんが謝ることはないって。悪いのは俺なんだ。好きになったら相手の全部が欲しくなって、焦って空回りする悪い癖があるから。そのせいで前回の恋愛も駄目になったのに、また同じことをしてる……」
「不安なのはお前だけじゃねぇよ。俺だって同じだ」
掴んでいた宮本の右手を解放した。力なく膝の上に置かれるそれを見ながら、必死に言の葉を繋げる。
「お前が和臣くんを乗せて峠を下っている間に、話をしたんだ。『宮本さんってば人当たりがすごく良さそうだから、今後モテちゃうことだってあるかもしれない』って、説得力を交えながら恭介が言ったんだぞ」
「人当たりが良くても、俺はモテたりしませんよ」
「そんなことねぇと思う。分かるヤツが見たら、お前の良さは伝わる。あのイケメンの恭介が褒めたくらいだからな」
「…………」
宮本を褒める橋本のセリフを聞いても、顔色が一向にすぐれないままだった。
「雅輝が不安なように、俺だって不安だってことを覚えておいて欲しい。できることならお前をどこかに閉じ込めて、誰の目にも触れさせたくないくらいなんだぞ」
「陽さんが現実的には無理な話をするとは、全然思わなかった……」
「だって、お前を誰にも取られたくない」
離されてしまった手と離れて座っているふたりの距離感が、まるで心の距離のように思えてならない。
少しだけ腰を上げてその距離を詰めたら、静まり返る室内にソファの軋んだ音が響いた。
「陽さんは我儘ですよね。俺のことを誰にも取られたくないって言ってるのに、結婚するのは嫌がって」
ふいっと背けられる宮本の横顔が、詰めた距離を遠のかせた気がした。
「嫌がってるわけじゃねぇよ。そうじゃなく、結婚は一生モノなんだぞ。普通は慎重になるだろ?」
「ああ、そうか。陽さんはまだ遊びたいから、俺に縛られるのが嫌なんですよね」
「違うって! 俺みたいなのが、お前の相手でいいのかと思ったんだ」
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