アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Love is in danger6
-
***
冷静に考えられるようになるまで、半日も使ってしまった。その後アプリのメッセージで宮本に連絡を取ってみようとスマホを手にしたが、なかなかいい言葉が思いつかなかったため、とりあえず喜びそうなことを最初に書いてみた。
『将来的には、お前と結婚したいと考えてる』
という自分の気持ちと一緒に、宮本の怒りを鎮める言葉を羅列したメッセージ。そのすべてが、既読スルーされたのである。
(嘘でもいいから、あのとき結婚したいと言えばよかったのかよ。だけどそれじゃあ、自分の気持ちに嘘をつくことになるんだ。アイツには嘘をつきたくなかったからこそ、無理だと言った顛末がこれって笑うに笑えない)
1時間おきに「既読スルーすんなよ、バカ!」の文字が延々と書かれているスマホの画面を、橋本はぼんやりと眺めた。
友達になったばかりのとき、同じような状況に陥った際は、苛立った感情が先行していた。でも今は恋人としての関係を築いているせいか、苛立ちよりも不安しかなくて鼻の奥がツンとなる。
不安なくせに、それを知られないようにするために心にもないことをメッセージしている、自分の馬鹿さ加減にほとほと嫌気が差した。
「ああ、もう! 何もかもが嫌になる!!」
ソファにスマホを投げつけて、その場に座り込んだ。
このままメッセージを既読スルーされるのなら直接逢うしかないと考えて、次の日の仕事終わりに宮本が住むアパートに赴いた。
ピンポーン♪
「雅輝、俺だ。話がしたい、開けてくれ」
「陽さん、すみませんが帰ってください」
何も告げずにいきなり訪問した橋本を、宮本は玄関の扉を開けずに対処する。
「嫌だ、お前と話をするまでここを動かないぞ」
語気を強めて言った途端に、扉の向こう側から何かを殴るような変な音が聞こえた。
「今の音はなんだ? おい、大丈夫なのか?」
鍵がかけられているのが分かっていたが、ドアノブを激しくガチャガチャしながら心配になって話しかけた。そんな橋本を招きいれるように、扉が静かに開く。
「つっ!」
出てきた人物を目の当たりにして息を飲む橋本に、見たことのあるイケメンが申し訳なさげに頭を下げた。
「あの、はじめまして。友人の江藤といいます。雅輝から、これまでの経緯をうかがっています。どうぞ」
自分よりも身長が高いだけじゃなく、榊と同等レベルのイケメン具合を間近で確認したせいで、みるみるうちに橋本のテンションが下がった。
「あ、はい……」
江藤に殴られたのか涙目で頭を抱える家主の宮本に代わり、元彼に誘われてアパートの中に入ることになった。
(あれ? なんだか家の中の広さを感じる。それに飾ってあった美少女フィギュアの数も、かなり減っているじゃねぇか)
多分、1週間ぶりぐらいにお邪魔した恋人の室内の様子がガラッと変わっていることに、橋本は面食らった。
ちょっとは片付けろよと言っても「そのうちやります」と困った顔で誤魔化していた宮本がやったとは思えない行動に、どうしても驚きを隠せない。
「江藤ちんのお節介……」
まじまじと室内を眺めていた橋本と、居間の中央に立ちつくしている江藤に背中を向けていた宮本が、小さな声でボソッと呟いた。
それを聞いた江藤は間髪入れずに、右手の拳で宮本の後頭部を殴りつける。
ゴンッ☆
「お前、バカなのか。恋人がどんな気持ちでここにやって来たのかを、その頭で考えてみろよ。宮本が俺様に同じことをしたら、こんなもんじゃ済まさないんだからな!」
以前スマホ越しで一人称を聞いたときには、ものすごい違和感があったのに、本人の口からそれを聞いても『コイツが言うなら納得だな』と思わせる、説得力のある美麗な顔立ちを江藤はしていた。
「江藤さん、落ち着いてください。雅輝が俺に逢いたくない気持ちも分かっていますので」
怒り狂った江藤に話しかけると、目元にかかる長い前髪に手をやりながら橋本を見下ろしてきた。
「あ~、えっと……」
「橋本といいます。はじめまして」
(元彼と今彼が恋人の家で鉢合わせするなんて、普通はありえねぇことだろうよ)
自分とは逢いたくないと拒否した宮本が、自宅に元彼をあげていた事実で、橋本の心にザックリと傷がついた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 74