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Love is in danger7
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「俺様がここに来たのは、雅輝と連絡がとれなくなったのがきっかけなんです。事情を聞くのに渋るコイツを押しのけて、無理やり家に上がり込んだいきさつがありまして」
「そうなんですか……」
冴えない橋本の顔色で心情を察し、これまでのことを流暢に語る江藤の姿に、やるせない気持ちになっていく。察しが悪いせいで、不器用な恋愛しかできない自分が心底嫌になった。
「おい雅輝、いつまでふてくされてるんだ。こっちを向けって」
江藤は気落ちする橋本をそのままにして、自分たちに背を向けていた宮本を強引に振り向かせ、顔を突き合わせる体勢にした。
「橋本さんは、雅輝が不安になってる理由を知っていますか?」
橋本と宮本の脇に控えた江藤に訊ねられて、一瞬だけ言葉に詰まる。それは江藤が腕を組みながら自分を見下ろしていることで、躰から発せられる妙な威圧感をひしひしと感じ取ったせいでもあった。
「雅輝が不安になってる理由……。それ、は、俺がプロポーズを断ったことが原因かと――」
「違いますよ、それが理由じゃないです」
すぐに否定する返答を聞いただけで、なんだか追い詰められた気分になる。
目の前にいる宮本にチラリと視線を飛ばしたら、橋本を見ないようにするためなのか、顔を横に背けていた。
(――おいおい。元彼に口撃されてる今彼を、助ける気にもなれないっていうのか!?)
頼りない恋人を目の当たりにして、橋本の心にふたたび傷がついた。脈を打つたびに、傷口から血が溢れているような錯覚に陥る。
「俺様は、かいつまんだ状態でおふたりの付き合いの話を聞いてました。ほとんど雅輝の惚気話が、中心だったんですけど」
「……そうですか」
乾いた声でやっと返事をした橋本に、江藤は声のトーンを落として話を続ける。
「橋本さんの態度から、雅輝にたいする気持ちは分かるって聞いてます。ですが言葉では、あまり言ってないですよね?」
「言ってません。自分なりに言うタイミングがズレてしまったり、その場の雰囲気にそぐわないと判断しているので、あえて言ってません」
どこか言いわけじみた返事になったが、橋本としては誤魔化すことなく即答してみた。
「でも雅輝からは、たくさん聞いてますよね? それに合わせて、言えばいいんじゃないでしょうか」
投げつけられた質問に、橋本は奥歯を噛みしめる。
さきほどのように即答できない理由は、自分の考えをまとめるためだった。
躰の向きを変えて江藤と向かい合い、ひしひしと伝わってくる威圧感に負けないように両手を握りしめた。
「江藤さんのご指摘は分かります。気持ちは見えないものだから、きちんと言葉にして相手に伝える。それによって、安心感を与えることができますから。ですが俺は不器用なんです。頭では分かっているんですが、それが実行できません」
(元彼に晒す今彼の醜態を、どんな気持ちで聞いただろうか――)
「頭で分かってるくせに実行できないなんて、やる気がないからしないっていう、面倒くさがりな人間と同じですよね。雅輝を想ってるのなら、ちょっとずつでも努力しようとするのが、恋人なんじゃないですか」
言いわけを口にするたびに小さくなった橋本を、怒りで頬を紅潮させた江藤が眼差しを鋭くしながら怒気を強めて糾弾した。
「それは……」
「不器用だからなんていうくだらない理由を作って、逃げ道を作る卑怯な男に、大切な友人は任せられないです」
江藤の指摘は、もっともなことだと思った。
(不器用だからこそいい関係を保つべく、手を尽くして努力する――それを平気な顔して怠っていたのだから、非難されて当然なんだ)
手のひらに爪が食い込むまで両手を握りしめつつ、震えそうになる躰を何とか律した。
「江藤さんは親友として雅輝を心配しているでしょうが、俺は何があっても、コイツを手放すつもりはありません。大事にします。ご指摘いただいたことについては――っ!?」
横から抱きしめられた衝撃をもろに感じて、橋本の足元がぐらりとふらついた。
「陽さん、陽…さん」
鼻をすする音と一緒に、自分の名を呼ぶ恋人の温かさを躰にじんわり感じて、拳の力が一気に抜け落ちた。
絶妙といえるタイミングで抱きついてきた宮本にちょっとだけ笑いかけてから、両手で腕を振り解く。
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