アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Love is in danger12
-
すると太い眉毛をへの字にして、しょんぼりした表情をする。
「陽さん、ごめんね。てっきり感じているかと思って、ここぞとばかりに責めちゃった……」
「あ、やっ、痛かったのは確かだけど、最初だけだったし」
飼い主に叱られた犬のような顔の宮本を見て、叱りすぎたと後悔しても遅し――。
嫌な雰囲気が流れている中で、宮本が起き上がっている橋本の太ももに頭をのせてきた。大きな背中を丸めて顔が見えないようにされたため、どんな顔をしているのか分からない。
だけど、それまでのやり取りで落ち込んでいるのは確かだったからこそ、ぼさぼさ気味の髪を整えるように撫でながら、ポツリと呟いた。
「なんか、不思議な気分だ」
「何がですか?」
宮本は告げた言葉に反応して頭を動かし、橋本の顔を訝しげに見上げる。
「ここら辺では負けなしの走り屋をしていた、お前の恋人になってる自分がさ」
「俺も不思議です。走ることしか能のない俺を、格好いい陽さんが好きになってくれたことが謎すぎます」
さっきまでのことを帳消しにすべく、話題転換を図った橋本のセリフに宮本がノッてくれたことが嬉しくて、唇に笑みが浮かんでしまった。
「陽さんのその笑顔、俺が独り占めしているんですよね?」
言いながら仰向けになり、真剣な眼差しを注いでくる。心を射抜くようなその視線を感じたら、胸が絞られるように痛んだ。
「ああ、愛情を込めて見つめてる」
橋本の笑みに応えるように微笑みながら右腕を背中に伸ばし、宮本の指先が直線で形成された何かを書く。
『スキ』
大きく書かれたカタカナの文字はきっと、ピンク色になっている気がした。
「雅輝……」
「誰にも見えない刺青に、俺の気持ちを刻んでみました」
爪をたててそれを書いたわけじゃない。橋本の感じる部分を指先で狙って、絶妙に書かれただけ。
そのせいで多少なりとも歪みのある文字になったものの、なぞられたあとも『スキ』という言葉が背中に残っている感じだった。
それを見えない刺青というセリフで示した宮本の表現力に、舌を巻くしかない。
「俺はどうやって、雅輝に気持ちを表したらいいんだろうな。峠をかっ飛ばして気絶させるくらいの衝撃を与えるなんていう、器用な芸当はできないし」
「陽さんってば、さりげなく俺の運転に文句を言ってます?」
「言ってねぇよ。たださ……」
言葉を引き結び、大好きな宮本をじっと見つめた。
「はい――」
口を噤んだ橋本の視線を受けて、宮本は慈愛を含んだ眼差しで見つめ返す。
「心だけじゃない、躰の中までお前の想いが深く刻まれているのに、俺は雅輝に同じようなことができているだろうかと考えた」
「陽さん、そんなの」
「お前の言いたいことは分かる。だがな江藤ちん、第三者に不安材料を突きつけられたら、自分の間違いを正した上で、雅輝を愛さなきゃ駄目だろ?」
ところどころ掠れた橋本の声に、愛しい恋人の顔色がどんどん曇っていった。
「……陽さんは格好いいから、俺が不安になっちゃうんです。どうすればずっと、自分に惹きつけることができるだろうって」
「恭介ならいざ知らず、俺レベルはそんなにモテねぇよ。30過ぎのハイヤー運転手にぞっこんなのは、お前くらいさ」
宮本の頭が乗ってる太ももをちょっとだけ上げながら顔を寄せて、唇を重ねる。
「んんっ!?」
勢い余ってしまい、互いの前歯がぶつかった衝撃で唇が離された。
「お前が好きだ、雅輝。いつかは結婚したいと思ってる」
キスのあとに、前日されたプロポーズの返事を口にした。内心ドキドキしているのを隠したら、変なアクセントで告げてしまった。
自分が思ってることを言葉にしたというのに、宮本は信じられないといった表情をありありと浮かべる。
「ほんとに?」
「もちろん。戸籍ごとお前を縛りつけたいんだ、それくらい分かれよな」
「うっ嬉しすぎる!」
「喜んでるところ悪いんだけどな」
ちょっとだけ頬を染めてうっとりする宮本に、橋本は意を決して話しかけた。昨日考えていたことを、頭の中でばばっとまとめる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
40 / 74