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暫く歩いてから「入ってそこ座って。」とだけ声をかけられる。
ようやく顔を上げると、オレンジの扉に喫煙室とだけ書かれていた。
「……喫煙室?」
「ここ、誰も来ないから。俺のサボりスポット。」
そう言って扉を開けられるが、中は酷い煙の匂いがした。
俺がわかりやすく顔を顰めるとその男は半身で振り返っては
「ありゃ、ダメ?」
と笑いながら言った。
鼻につくやつだ。
「タバコ、嫌いなので。」
「別に吸わせる訳じゃないし良くない?」
「……匂いがダメです。」
「人にゲロ吐いといてよくそんなワガママ言えるね。…まぁいっか、じゃあ椅子外に出すよ。」
その言葉にハッとする。
そういや俺、この人に吐いたんだった。
忘れることじゃ無いだろ…と言われれば同感するけれどすっかり忘れていた。
男は胸元にべっとり俺の吐いた物を付けたまま、器用に片足でドアを開けながら椅子を外に出した。
簡易的な椅子とはいえ正直有難い。
2つ引っ張り出すと適当に並べ、ひとつに座ってもう片方を指さした。
「ほら、座って。吐くほど体調悪いんでしょ?」
「……そういう訳じゃないけど。」
俺のぶっきらぼうな返事に男ははぁ、とでかいため息をついてイラついたように上着を脱いだ。
酸っぱいにおいの先にまたあの煙のにおいがする。
ボコボコとこみ上げる吐き気を飲み込もうとするとそれより先に布が俺の顔を覆った。
「吐いていいよ。どうせもう捨てるし。」
「……う"…、っ……」
その言葉にまた、喉がかっ開かれた。
無理やり吐かされる感覚。
首の後ろに手を置かれ「心配ないよ」なんて優しい声に押し出される。
やめろよ。
もう今更優しくしないでくれよ。
「何があったの?なんて優しい事聞かないけどさ。体調悪いの?それとも気持ち的な問題?」
暫くしてようやく落ち着いた俺にミネラルウォーターを差し出してそういった。
俺はゲロまみれになったスーツを口に当てながらやっとその男の顔を見た。
少し長い髪には軽いパーマがかかっていて、幅広の二重が特徴的だった。
いわゆる美形。
白い肌に太い眉が映える、何もしなくてもモテそうな顔をしていた。
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