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「生駒、おいで。」
煙のようなアロマの湯気が上がる。
その中から伸びる手に、息が上がった。
触るなよ
やめて
舌を嚙みちぎろうと震える歯を浮かした時
「………っう"、…あ…………」
決まっていつも目が覚める。
俺は革でできたくすんだ茶色のソファに体を沈めては、息を深く吐いた。
同じ夢を見る。
いつも、決まって雨の日に眠ったときに限って。
仕方なく重い体を起こすと、窓に雨が打ち付け割れるんじゃないかという音を立てていた。
頭が痛い。
机にあった冷え切ったコーヒーを手に取り、まだぼんやりした頭のままノートパソコンを開いた。
「芳野………営業部…の、下っ端か。」
評価表を見てため息が出る。
10点評価のうち、ほとんど1か2だ。
本人が仕事ができないのか、もしくは上司が仕事ができないのかはこれだけではわからない。
コーヒーを傾ける。
シンプルに不味い。
従業員情報の中、ふと気になる文字が目に留まる。
貿易事務希望、英語ビジネス会話レベル。
「なんで海外部門に入ってないんだろ。」
静かな部屋の中に呟きが落ちる。
人事で見落とすわけがない。
使えるものは使えがこの会社のモットーだ。
英語ができて営業で使えない人間がいるなら、海外部門に入れるのが妥当だ。
もし、意図的に仕組まれたことがあったら……
「…かわいそ。」
つまり外れくじ。
他人とはいえ、片足突っ込んでしまっただけに粗末には考えられない。
明日また、話してみるか。
と開いたばかりのノートパソコンを閉じた。
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