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「ここ静かで良いな。落ち着く」
「だろ?」
日崎に"とっておきの場所"とつれられたここは、校舎裏の一画。
ナラの木が枝を伸ばし、緑の葉っぱがベールになっていてもう7月に入ったのに涼しい。
「このベンチ、誰が置いたんだろ」
「これ?この学校昔、園芸部があったらしくて。ほら、あっちの方畑っぽいでしょ?」
日崎が指差した先には、草が生い茂ってはいるが、レンガで四角に区切られた場所があった。
「へー、詳しいんだな」
と俺が言うと、日崎は少し俯いて
「兄貴が、ここ卒業してるから」
と聞き取れるか微妙な音量で言った。
なんか地雷踏んだ──?
「隙あり!」
「ちょ、俺も嫌いなんだって!」
杞憂だったみたいだ。さっきからやってたニンジンの攻防戦がまた始まった。
──なんか日崎に会ってから一気に青春っぽくなったな。
いまだにちょっと陽キャの距離感とノリはわからないけど、日崎に感謝しないとなぁ。
なんて思ってたらいつの間にかご飯の上にニンジンが置かれていた。
日崎は何食わぬ顔で形の崩れた卵焼き食べてるし。
──これだけは許さない。
「今日の放課後空いてる?」
「今日?」
予鈴が鳴って、人の波に乗りながら教室に帰っているところだった。
ちなみにニンジンは半分に割って二人で食べた。
「空いてるけど」
「ギター持ってここの公園来て。場所はラインで──って、ライン持ってなかったっけ」
「らいん──?ああ、ライン」
スマホは持ってるけど、ラインの連絡先持ってるのは家族だけだった。
「よくわかんないから日崎やって」
電源を入れて初期画面のままのスマホを渡す。
ん、と言って受け取り、すごい速さで指を動かして、俺に返してくれた。
家族の名前ばっかりが並んだリストに、"Syu_h"という意外にもシンプルな名前が並んでいるのが、なんとも嬉しかった。
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