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日崎だけにチャンネルが合っていた視覚と聴覚と、その他もろもろが日崎以外のものも拾いはじめる。
隣で机を取り囲んでた女子たちが、日崎のグループの男子たちが、後ろの方で固まっていた女子たちが、口々に何かを言っている。
「ねえ──」
隣の女子が話しかけてきそうな雰囲気を察し、俺はまた机に伏せた。
ごめんって、言われてしまった。
確かに謝られることなんだと思う。あまりにも急すぎたし、男の俺相手にすることではないし。
日崎にとっては人生で何度もあるキスで、今回が初めてじゃないんだと思う。そんな何十、何百分の1を何かの気の迷いで俺に消費しても良いんだろう。
だけど、さ。
俺にとってはこれが初めてで、最後かもしれないんだから。
それを「ごめん」って。間違いだったみたいに言われたくなかった。
俺、謝ってほしいなんて思ってない。だって、不思議と嫌じゃなかったから。
唇の感触も、触れた瞬間に吹いた風も、日崎の瞳に宿った熱も、俺の心臓がぎゅってした感覚も、全部が心地いいわけではないけど、決して不快なものじゃなかった。
なのに──。
昼休みまであと授業はひとつ。
号令をしても、クラスは全体的に落ち着きがなかった。
日崎目立つもんなあ。その時教室にいたほぼ全員が見てただろうし、いなかった人にもこの出来事は知れわたっていたし。
国語の教師はゆるいから、いつもなら何通も日崎のメモが届くのに、今日は一通も届かなかった。
いつも中継地点になってくれてる女子も、そわそわしながらたまに俺と日崎の方を見てきた。
授業中はいつもにも増して解読不能な文字でノートを取るだけで、内容は何一つ入ってこなかった。
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