アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
23
-
教室からいろんなところに向かう人の群れをかきわけて、せっかく早めに校舎裏に来たのにそこに日崎はいなかった。
「何でだよ…っ」
日崎がいないんだったら前みたいに薄暗い階段で食べよう。ここは俺一人には眩しすぎる。
出しかけていたお弁当箱をまた袋に戻して立ち上がったとき、土を踏む音が聞こえた。
「来てくれてないかと、思ってた…」
「…そっちこそ」
自分が話すって言ったくせに。
「で?」
膝をがくがくさせながら座る日崎は、いつもよりもっと右にいた。
「隣のクラスに、男同士で付き合ってるやつが、いるらしくて。
オレの友達……がそいつらを馬鹿にしてて。男同士で付き合っても、キスしてもいいだろって言いたくて──」
俺はただただうなずいて聞いている。
「北田となら、できるかなって」
「それで──」
「ほんと、ごめん」
「それで、日崎の友達はなんて?」
「俺が怒ってるの分かったっぽくて、黙ったよ」
じゃあよかった、と俺は返した。
俺だって誰かの陰口みたいなのは嫌だから。
「でも、北田の許可なかったのにあんなことしたのはマジで申し訳ないと思ってる。……ダメかもしれないけど、これからもオレと一緒にバンドして、一緒に昼飯食べてほしい」
いつもはあんなにまっすぐ見つめてくる瞳が、今はこわごわ向けられている。
そんなの、お前らしくない。
「いいよ。あと、ごめんっていうのやめて」
日崎がこれ以上固まらないようにできるだけ優しく言ってみた。
日崎はなんで?という顔をして首をかしげた。
キスされたのが他の男子だったらきっとそのあと何回も口洗ってたと思う。だけど、日崎だったから──っていうのはちょっと言えなくて。
「俺、そんなに嫌じゃなかったから」
とだけ返しておいた。
俺がご飯を食べはじめる隣で、しばらく日崎は固まっていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
23 / 71