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「あ、そうだ。浴衣着ていく?」
「浴衣?」
それこそ小学生の時は、甚平とか着て行ってたけど、だんだん姉ちゃんたちと行くのも恥ずかしくなって夏祭り自体行ってなかったからな。行く友達もいなかったし。
「俺持ってない」
「うーん、ちょっと立ってみて」
意図はわからなかったけどとりあえず言われた通りお弁当を横に置いて立ち上がる。
俺より少し高い位置にある目が俺を見下ろす。
「なに、俺が身長低いって言いたいの?」
170あるぞ。ギリギリだけど。
「いや、違わないけど違う」
「違わないんじゃん」
「まあね──たぶん兄貴の浴衣着れるよ。身長一緒ぐらいだし。祭り行く前オレんち寄ってって」
「あ、ありがとう」
友達と夏祭り行くなんて、しかも浴衣着ていくなんて初めてのことでわくわくする。
「楽しみだな」
「…!」
ベンチに腰を下ろしながらそう言うと、日崎は目を見開いたあと、少しにやついて首を横に振った。
「なに」
「何でもない。北田がそんなに楽しみにしてくれてるのが嬉しいだけ」
「……」
言われて初めて口角が上がっていることに気づく。
「…練習頑張らないとな」
「そうだなー」
夏祭りは文化祭のためのリハーサル。
そして来週からは夏休み。
部活もなければ塾もゆるい俺にとっては音楽に打ち込める絶好の機会でしかなかった。
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