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最近になって、相田さんが俺に笑顔を向けてくれることが増えた。
以前はメモを回すときにヒヤヒヤしたこともあったけど、彼女もコツを掴んだらしく安心して受け取れるし、安心して渡してもらえるようになった。
俺が咳払いをする。それが俺と相田さんの間の合図だった。
そうすればそっと手を後ろに出してくれる。そこにさっとメモを差し込むのだ。
俺だって上手くなった。日崎だって。周りのやつらもスルーしてくれてるみたいだし、そろそろメモの保管場所も窮屈になってきた。
それが俺と日崎、俺と相田さんの親しさに比例しているようだった。
相田さんの下の名前は"ゆき"というらしい。友達と話している中から聞いた。それでやっと出席簿にあった"柚季"という漢字の読みがわかった。
そして友達と話している断片が耳に入ってきて知ったことがある。
彼女も夏祭りに行くらしい。
──ライブに誘ったら相田さんは来てくれるだろうか。
でも彼女は音楽に興味がないかもしれない。もし興味があったとしてもアイドルやJポップが好きかもしれない。
それに何より、仲良くなれたと思ってるのも俺だけかもしれない。
それが何より怖く、なかなか彼女宛てにメモをかけない理由だった。
「日崎さ、ライブに誰か誘ったりする?」
「オレ?オレは友達と兄貴かな。北田誰か誘うの?」
「まあ姉ちゃんと、母さんと、父さんは来れるか分からないけど──あと、相田さんを誘おうと思ってる」
ウインナーを食べながら、自然を装って言ってみた。
「ふーん……良いんじゃない?」
……日崎の返事がワントーン下がったのは気のせいなのか。
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