アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
39*日崎side
-
「柊、風邪引くよ」
「ん?……あ、兄ちゃん」
よいしょ、と体を起こしてソファーに座り直す。
時計は1時を指している。いつの間にかソファーで眠ってしまっていたみたいだ。
「ココア作るけどいる?」
「ありがと。アイスで」
大学に入ってから、兄ちゃんがこんな時間まで起きていることも珍しくなくなった。
今日もたぶん自分の部屋で課題をやってて、リビングに下りてきたんだと思う。
「はいどーぞ。疲れてんの?」
ことん、とオレのマグカップをテーブルに置いて兄ちゃんは俺の隣に座った。
「…まあ」
精神的に。自分でもよくわからない感情を抱えることは、とても疲れる。意識しないようにしていても考えちゃうし。
「話してみる?お兄ちゃんが聞いてあげるよ」
ココアを飲みながら優しく微笑んだ。鏡に写ったオレによく似ている。まぎれもなくオレはこの日崎亮という人間の弟で、似ているんだと実感する。
──兄ちゃんなら、このもやもやも、それを心の隅では気づいているある言葉と結びつけたくない気持ちも、全部全部わかってくれるのだろうか。
きっと同じような経験をしたことがある、兄ちゃんなら。
だけど。相談してしまえば、認めたことになってしまう。
オレが今欲しいのは同情でもなく、打開策でもなく、否定だった。
だから、オレは認める、認めないの前に知りたかった。
「兄ちゃん、好きってなんなんだろうな」
──好きの定義を。
ココアで甘く染まった舌で言葉を紡ぐ。
「──それは人によって違うからね。僕は柊のことが大好きだし、愛してるけど、きっと今柊が言ってる好きとは違う。
ただ、僕にとっての好きは、辛くて、苦しくて、それでも光り輝いてるものだよ。」
「…そっか。ありがとう」
オレは甘ったるくなったココアを一気に飲み干して、ごちそうさまと言って立ち上がった。
辛くて、苦しい。
やっぱり兄弟なんだよなぁ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 71