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「おはよう」
今日は北田体操1日め──じゃなくて、夏休み1日め。そして今日は日曜日。
「昨日うさぎの赤ちゃん産まれたぜ」
「本格的に動物園みたいだな」
そう、我がバンドのドラム、前川の家に遊びにいく日。
前川の家は高校から少し遠くて、俺たちは駅に集合していた。
「めっちゃ楽しみ!」
やたらテンションが高くてわくわくしている日崎が可愛かった。
最初こそわくわくしていた俺だったが、10分も歩かないうちに座り込んでしまいそうだった。
太陽め、先生に言いつけてやるからな。
──普段からまともに運動していない俺が悪いんだけど。
「頑張れ北田」
帰宅部のくせに何故そんなに体力があるのか。
俺のはるか前を行く日崎が俺のもとへ戻ってきてくれた。
天使の羽と輪っかが見える気がする。そろそろ熱中症かもしれない。
「引っ張って」
ぜーぜー言っている俺が右手を差し出すと、ため息をつきながらも案外素直に繋いでくれた。
日崎の手は俺より少し大きくて、俺の手のひらを包んだ指は細かった。
暑さからか異常に脈打つ脈拍が、日崎のそれとリンクする。
──キスしてるときと似てるかもしれない。
そんなことを考えてると突然頭の暑さが楽になった。
「おまけ」
日崎の声に前を向くと、帽子を被っていることに気づいた。
さっきまで日崎が被ってたやつだ。
「……ありがと」
若干ぶかぶかな帽子と、自分の手の先の景色が相まって、なんか俺……日崎の彼女みたい。
一度そんな馬鹿げた発想が浮かんでしまうと、日崎の方を見るのも気恥ずかしくなってしまって俯いて歩いた。
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