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58*日崎side
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左後ろから力強くて楽しげなギターの音が聞こえる。さっきまで俺の腕の中で震えていたのが嘘のようだ。──オレにとっては良くも悪くも。
北田が楽しそうだとオレは嬉しい。
──だけど、北田があまりにもかっこいいから、オレが北田に抱く感情が間違いだと思い知らされる。
北田はやっぱり誰かを抱き締める人でなければいけない。今最前列にいる相田さんのような人を。
オレが相田さんだったら堂々と言えるんだろうか。
今歌っているこの唇は、ついさっき北田の首筋に触れた唇なんだって。
オレは北田に恋してるんだって。
でも北田はオレなんかじゃなく相田さんが好きで、相田さんも今の顔を見る限り北田に好印象を抱いていることは間違いない。
隣の友達が虚ろな目で手拍子を送る中、1人ステージに吸い込まれるように目線を送っている彼女は、確実に北田を見ていた。
……もうオレが入る余地ないよな。
そう思わざるを得なかった。
だからオレは、消せない恋心を友達の皮で覆い被せて隣で歌うことにする。
歌いながらそう決心した。刹那の思考だったけれどそれは確実にオレの心に錨を突き立てた。
何度も何度も練習を重ねたギターソロは相変わらず完璧には鳴っていなかったけれど、ずっと覚えていたいと思う音たちだった。
──それは紛れもなくオレが北田に恋しているから。北田から生まれる全てを知りたいと思うから。
北田に嫌われたくないから恋心を隠そうと思ったのに、気づけばわがままでずるい自分になっていた。
北田に愛されるはずのない、自分に。
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