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「犬みたいだな、こいつ……。見た目は同世代の男なのに、妙な気分だ」
落ち着いたところで、桃麻はそっと神の肩から手を離す。そして名残惜しそうにしている神の手の平の上に、指で文字を書き始めた。
「『あんたは神か?』と……。どうだ、伝わるか?」
呟きながら桃麻が神の顔を見上げると、彼はこくりと頷いた。どうやら文字は理解できるらしい。
「目が見えないのになんで文字が分かるんだろうな。……ま、相手は神だし考えても仕方ないか。じゃあ次は……」
桃麻は次々と問いを神の手の平に書いていった。
――この近くの村を害しているのはあんたか。
――あんたは邪神か。
――あんたが司るのは病、飢饉、日照り、その他そういうものに類する事象か。
それらの問いに、神はすべて首を横に振った。
「まあ自ら邪神を名乗る訳はないか」
しかし神の落ち着いた様子から、村に何かしらの影響を与えていたとしても、それは意図的に悪意を持ってやっているという訳ではなさそうだ。
もっと、この神について知らなければならない。
しかし「はい」か「いいえ」で答えられる問いを考えるには限度があるし、そこから引き出せる情報も限られている。
「やっぱり聞こえず話せないって相手は厄介だな……。せめて耳と口だけでもあればいいのに」
桃麻はため息をつきつつ次の質問を考える。
すると神が捕まれていない方の左腕で、ぺたぺたと桃麻の肩を叩いてきた。
「ん? 何だ?」
桃麻が顔を上げると、彼は首を傾げていた。
「もしかして、何故質問が止まったのかって聞きたいとか?」
試しに手の平に書いてみると、神はこくこくと頷いた。そしてもう一度、首を横にこてんと倒す。表情はないのに、どこか興味津々な様子が感じられた。
もしやこの神は、人間を始め他の言葉を使う存在と直接ふれあったことがないのだろうか。
そう考えると、なんだか愉快になってきた。
これまで誰とも交流の無かった四翼の神。彼が初めて話す相手が、自分を殺しに来た退治屋の桃麻なのだから。
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