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留守番①
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「久遠。明日から一週間、僕は仕事に行かなきゃいけない。留守番できるね?」
「仕事…?」
「食べ物は買ってあるから、好きに食べて。必ず戻ってくるから、外に出ないで待っているんだよ」
「うん…」
返事をしたけど、もう不安になっている。
紫音がいなくておれがひとり。
ひとりなんて全然平気だ。ずっとひとりだったんだから。
「待ってる」
「うん、いい子だ」
次の日、紫音は白いワイシャツを着て、荷物は持たずに玄関に立った。
出かける前に振り向いて、しゃがんでおれと目を合わせて真剣な目で話した。
「ひとつ、約束してくれる?」
「なに?」
「もやもやしても、自分でしないこと。帰ったらしてあげるから我慢できるね?」
「そんな、自分でなんてしないよ…っ!」
「そう。いい子だ。じゃあ行ってくるよ」
紫音は最後にキスをしてくれて、玄関のドアを開けて行ってしまった。
がちゃんとドアが閉まるまで紫音を見送って、唇の感触を噛み締めた。
ひとりだって大丈夫だ。
おれはずっとひとりだったんだから。
紫音は必ず帰ってくる。おれには居場所がある。
静かな部屋で寝転がって紫音の帰りを待つ。
お腹が空いたら、紫音が用意していたパンを食べる。
ひとりでの食事はとても静かで、寂しかった。
一人の長い一日を終えて、カレンダーにバツ印をつけた。
あと6日。
待っていれば紫音が帰ってくる。
大丈夫。
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