アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
お仕事①
-
朝目が覚めて、紫音が隣にいることを確認する。
紫音が帰ってきてくれてよかった。
そばにすり寄って紫音の匂いを確認して、ぎゅ、と甘えて抱きつく。
紫音はそれに応えるように優しく包み込んでくれた。
幸せを噛み締めて、紫音の言うことがきけるいい子でいようと強く思う。
この幸せがどんなにアンバランスで脆いか、紫音の気分ひとつで壊れていくものなんだと理解して、小さな不安に蓋をして、目の前の幸せを貪る。
「久遠。来週も仕事があるんだ。一緒にきてくれる?」
「もちろん!」
「そう。久遠が手伝ってくれると僕も助かる」
紫音に頼られるのが嬉しくて、ずっと一緒にいられるのがもっと嬉しくて、おれは高揚していた。
「おれ、なんだってするよ。紫音、なんでもいって」
「うん、そうだね」
--------
お仕事に一緒に行けるその日、おれは紫音のブカブカのワイシャツを着て、下は何も履かされなかった。膝上まで隠れてはいるけど、スースーと風が通って外を歩くのは恥ずかしい。
そういえば、紫音の家にきてから外にでたことがない。窓から見ていた風景は見知らぬ場所で、ここがどこなのかも理解していなかった。
外といっても、そこは何かの広い施設の敷地内のようだった。
紫音の家は5階建てのマンションで、遠くには高い塀と門が見える。荘厳で重圧感のある塀に不気味さを感じた。
「紫音…ここ、どこ?」
「僕たちの生きる場所。あそこの門には近寄っちゃいけないよ。わかった?」
「…うん」
紫音はそれ以上説明する気はないようだった。
歩いていくと、城、と呼ぶのにふさわしいグレーのレンガ作りの建造物がみえた。
なんだか趣味の悪い性を連想させる男性の石像が入り口にあって、入ったら二度と出てこられないのではと思うほど暗くて不気味な雰囲気だ。
「紫音…」
「久遠、約束して。仕事中は誰にも逆らわないこと。ちゃんといい子でいたら、僕と一緒に帰れるからね」
仕事って、なに?ここでなにをするの?
急に怖くなって、気にしないようにしていた紫音のいままでの怖い言葉が頭に響いてくる。
「や…、帰ろう?怖いよ…」
「一人で帰る?そうしたら僕は久遠の分まで働くよ。また長く帰れないかもしれない」
「やだ、一緒がいい…っ」
「そう、じゃあ行こうか」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 43