アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7
-
───
犬も歩けば棒に当たるというが、僕の場合死体を見つけてしまう。或いは何かしらの犯罪に触れる。それだから外に出ることは嫌になり、学校さえまともにいかなくなった。僕だけが嫌な思いをするだけなら、まだいい。僕が犯人だと思われて、両親が悲しむことや、警察の無駄な徒労が嫌だった。
犯人は別にいるのに。
僕が何かしたわけではないのに。
…………………罫と出会ったのは、高校生の時だった。
あいつに人を殺せるような体力があるもんか、夏になると毎日熱中症でぶっ倒れてる奴だぞ、そんな度胸があるもんか、好きな女の子に挨拶さえ出来ない奴だぞと、隙あらば僕をこきおろしつつ全力で怒って全方位に立ち向かってくれた。心ない同級生の軽口にさえ、罫は訂正と謝罪を求めた。自分は僕を馬鹿にするくせに、他の人が少しでも僕を嗤おうものなら、容赦ないほど詰めた。僕が疑われるたびに警察より先に犯人を見つけて、僕と共に犯罪に巻き込まれては強い信念を持ってそれに対峙した。そしていつでも勝利した。名探偵の才能があるのは本来彼だったが、長年共に過ごすうちに僕も追いついていた……とは思う。
やがて罫は僕を名探偵にして小説を書くようになり、それは瞬く間に世間に愛された。生きている名探偵。実存する名探偵。紙面の中でなら僕は、不運にも死体を見つけてしまう奇人ではなく、類稀なる優れた直感力によって無意識的に犯罪の匂いを嗅ぎつけ、その結果誰よりも早く死体を見つけ、鮮やかに事件を解決する人物だった。
帝都の大事件にはいつも僕らが関わっていた。日常の可愛らしい謎解きもあれば、大犯罪者や巨大な犯罪組織ともやりあった。共に謎を解いて、たまに喧嘩して、時々、あとで思い出したくないほど、こっ恥ずかしい打ち明け話なんかもしたりした。
冷や汗をかきっぱなしの、目まぐるしくて、泥だらけで、美しい日々。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 387