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【第二話 ういんな】
「夜の運動会」
思考を巡らす。あらゆる可能性。そのどれもに対応可能な回答を口にする。
「…………外には出ないよ」
「夜ならいいじゃん。お散歩しようよ」
「断る。……………だいたい君、夕方までには帰るんだろ」
「礼介くん」
倫太郎は真剣な眼差しで僕を見る。誰かに似ている。誰かに似ていてほしいと、強く僕が望んでいる。だから無理矢理こじつけている。
「今日は夕方に雨が降るので珍しく夜は涼しくなるし、今夜だけ外出許可おりたし、つまり今日しかないの。アンダスタン?」
「………………わからない……」
「わかってるくせに」
「……………嫌だ」
「夜歩く」
「……………」
「江戸川散歩」
「……………」
「横溝行くし」
「…………」
「あれ、ウケない? 友達はゲラったんだけどな」
「…………………」
ねーえー。出かけようよー。倫太郎が駄々をこねる。僕はまた抱きつかれている。そして反射的に彼の頭を撫でている。
「…………駄目だよ」
記憶は簡単に僕を閉じ込める。どこへ出かけても、人が死んでいる。何回勇気を出しても、罫が傍に居てでさえ、この世は僕に不適合だった。
誰か死ぬぐらいなら、独りでいたい。
「大丈夫だよ」
倫太郎は何故か自信満々だ。この子は普通に生きているから、僕のことなんてちっともわからない。どうしたものかなと、心のなかで溜め息をついた。
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