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………………本当に雨だ。
夕方、風の音がやたら耳につくと思ったら、雨だった。滅多に外の景色すら見ないでいる。天気を気にするのも、なんだか酷く久しぶりな気がした。
「礼介くん」
「うん」
「カマドウマ食べたことある?」
「ない。………………………なに、もう一回言って?」
「カマドウマ」
「…………昆虫の?」
「そう。あれって美味しいのかなあ」
寝転がって端末を弄っていた彼は、飽きたのかそれをしまって、身を起こした。
「どこからそんな話題が出てくる」
「口から」
「うん。そうじゃなくってね」
「つべで観ちゃった。グロ。ああいうのはすぐ削除されんのにエロは削除遅いよね」
「……………」
「あ、また理解してない。YouTubeだよYouTube。ようつべ」
「………………そうですか」
「理解してなーい。おっさん。おじん。時代遅れにも程がある」
「不要」
「そうですかそうですか。おれらも撮ろっか? ブログ動画的な。適当になんかチルいエモい音楽くっつけてさ。バズると思うけどな。ひきこもりのおっさんを高校生が連れ出す感動……感動の。あの。えーと。すぺぷ、スペクタクル。書籍化間違いなし。全米が大号泣」
「……………九割がた何言ってるのかわからないけど、もう世間に顔を晒したくないよ」
「あ、そうか。礼介くん有名人なんだった」
夜更かしするんだから寝ようと乱雑に人を押し倒しては、またベタベタとひっついてくる。もはや彼を人間扱いしていいかどうかも怪しくなってきた。こういう生き物なのだと考えることにする。人間によく似た人懐こい動物。
「なんか子守唄とかないんですか」
謎の生物は我が儘を言う。
「ないです」
「あれ」
「命令形」
「あれよ。じゃあ昔話でも可」
「か」
「蚊。なんかないの」
「…………むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました」
「んふふふふ」
「なんだよ」
「本当にしてくれるとは思わなかった」
子供は満足そうに僕を見つめる。
「…………おじいさんはみかんをX個持っていました」
「あれ?」
「おばあさんはおじいさんの5倍持っています」
「あれれ?」
「そこに鶴と亀が現れました」
「お、昔話要素」
「亀は鶴の3倍いますが脚の数は全部で合わせて25です」
「あれれ?」
「鶴と亀は己の足一本ずつにみかんをくれと二人に言いました」
「お、おん」
「最終的におばあさんの手元には1個、おじいさんの手元にはみかんが3個残りました」
「ぎゃひ」
「さて亀は何匹」
「ねえ寝れないんだけど」
「おやすみおやすみ」
「めでたしみたいに言わないで。あと脚の数おかしくない? ていうかなんでおじいさんのが残って、え、これだけじゃ特定出来なくない? 答えは?」
「ごめん今すごく適当に喋った」
「寝れないんだけど!」
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