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だよね、と彼は呟く。
「熱出させたり泣かせたり散々だもんね」
「君のせいじゃない」
「礼介くん、もう死体とか事件とか、やだから、お外出ないの? それとも色々思い出しちゃってつらいから、やなの?」
「……どっちもだよ」
「おれ、来ない方がいい?」
「来ないでって言ったら、もう来ない?」
「………いや、それは無理なんですけど」
「なんだよ」
「だって言いつけですもん。お役目ですもん。おれの意思じゃないし、端っから。やれって言われなきゃやらなかったことだもん」
「そう」
「……………………なんか言ってて悲しくなってきた」
「あのね、会いたくないなんて言ってないよ」
ぶつかるように飛び込んできた身体を受け止める。わかりにくいよ、と怒る子供の髪を撫でる。
「今日の散歩は楽しかったよ」
「でも泣かせた」
「僕の弱さを君の責任にしないでほしい」
「あのさあ、礼介くん。人がいなくなるってのは、悲しいことなんだよ」
子供はまっすぐに僕を見つめる。彼の目に僕はどう映っているのだろう。
「………知ってる」
「でもいつか、元気になんなくちゃ駄目だよ」
そう言って倫太郎は僕の胸に顔を埋め、ぎゅっとしがみつく。この痛みから喪失から逃れるくらいなら、忘れるくらいなら、一生つらいままでいいと思えるのだが、僕は黙ってただその子を抱きしめてやった。
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