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子供相手に本気で怒りそうになり、僕は息を止める。倫太郎はきょとんとしている。
「………………友人以上のなにでもないよ、罫は」
「あ、そうなの? ふうん。てっきりそうなんだと」
「どこでそんな勘違いが出来る」
「小説全編読みまくったら。だってずっと一緒にいるじゃん。なんなら後半辺り一緒に暮らしてるし。違うのか、ふーん」
「それは小説の都合上いちいち登場人物を会わせるのが面倒だからで実際は暮らしてなんかないし………………その前に、大前提で、男同士だ」
「それってなんか重要?」
悪びれもせず、さらっと言ってのける。
学生時代を思い出す。なんであんな奴庇うんだ、もしかしてその気でもあるのかと、僕を擁護したばっかりに罫は心ない嘲笑と屈辱を受けた。もちろん罫のことだから即座に反撃に出て、相手を完膚なきまでに叩きのめしはしたのだが、何も出来ないでいた僕は未だに小さな傷を抱えている。人に守られてばかりで、何も出来なかった。
罫に恋人はいなかった。
女好きで友達は沢山いたが、色っぽいことになっても長続きした試しがなかった。
ずっと僕がいたから。
事件があったから。
ベッドの上で恋人とのんびり過ごすより、罫は僕と町中を駆け回り、謎解きに苦しんだ。
迷惑をかけ続けていた。守ってくれていた。僕と会わなければ罫は今頃結婚をして子供がいて…………………そんな想像をした。
彼の死んだ後で。
何もかもが、遅すぎた。
「……………普通は重要だよ」
「あらそう。わかんな。おれめっちゃ友達のこと大大大好きだけど、友達男だよ」
それはそうであろうなあ。親友が異性は滅多にないことだ。
「礼介くんも好き。シヅさんも好き。抹茶も好き。カピバラ好き。最近アナログ時計可愛い」
「そういう意味の好きには性別は関係ないけども……恋愛的な意味でだよ。好きな女の子とかいないの」
「いない」
まだまだ子供だ。感情を乱した自分に呆れる。
「だいたい恋愛ってわからな。みんな恋とか好きだよね」
「高校生ならそうでしょう」
「うーん。歌とかドラマとかなら、まあ、なんか、わかるけどさあ。リアルで?」
「クラスの子とかでさ」
「ドキドキしたら恋愛?」
「普遍的には」
「え、じゃあやっぱり男なんだけど」
おっと。
それはそれで別の緊張が走る。みんな違ってみんないい、の理論を解いて聞かせるほど、教育的な側面は持ち合わせていない。なんなら、旧世代のある種の野蛮で差別的な教育を受けてきた僕にとって、やはり簡単に受け入れられるものでもない。
「……………そうなの?」
とりあえず言葉を返した。
「うん。Gackt様」
「あっ、それはしょうがない」
「それはしょうがない?」
「それはしょうがない」
「これはしょうがないのか」
「うん」
「あとねえ、長瀬智也」
「ああ……それもしょうがない」
「これもしょうがない?」
「しょうがないねえ」
「だよね。ああいうの兄ちゃんに欲しい。バイク教えて欲しい」
「うん。それは皆そう」
「ですよねえ」
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