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長すぎるトンネルを抜けて、列車は次の駅に向けて緩やかに速度を落としていく。
「……もう一度言って頂戴」
「君からすれば聞き飽きた台詞だろ。今まで幾人に言われたやら」
「貴方からは言われてないもの」
「……………好きだ」
「もっと早くに聞きたかったわ」
「そう? 聞きたくなかったって言われるのがオチかと思ってた」
「酷い人」
「だって君、僕のこと避けてただろ」
「そんなことないわ」
「すぐ馬鹿にするし」
「可愛いからよ」
「罫には優しいのに」
「貴方って本当に鈍感なのね」
「すまない。女性に不慣れなもので」
綺麗に頬を伝う彼女の涙を拭ってやる。罫とは違って色恋沙汰とは無縁な僕が、こんなことをしているのはなんだか絵空事のような気がしてきた。けれどこれが現実で、彼女こそ僕の生まれてきた意味なのだと、強く実感していた。
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