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「お久しぶりです」
「うるせえ来んな来んな、なんだ生きてやあがったのか、こん畜生め、うせろうせろ!」
ダミ声の罵詈雑言懐かしく、僕は笑ってしまって、倫太郎はますます怯える。
「こちら鬼川警部……じゃない現署長。それでこちらが僕の友人」
二人にお互いを紹介させる。倫太郎は頑張って顔面を隠しながら、はしゃぐ。
「えっ、あの! 千里眼・鬼川警部! マジか!」
「昔はな。………お前、友人って。子供じゃねえか。またなんか事件か」
「そんなわけないでしょう」
ちゃんと挨拶しなさい、と僕は倫太郎を捕まえる。フードを脱がそうとしたら抵抗された。
「え、やだやだ! 好きだけど! 好きだけども! でも千里眼じゃん! 見透かされるもん! 長年の経験と野生の勘が!」
顔面と苗字は厳めしい鬼川署長は、眉間に深い皺を作りながら、この珍妙な子供を見て笑いをこらえている。何度も何度もこの街で第一発見者になる僕を、真っ先に疑い、真っ先に信じてくれた警察職員は彼だった。罫のような、なんでもない高校生の話も、しっかり聞いてくれた。僕に対する悪口雑言は耐えないが、それ以外で間違ったことはしない人物である。
あと名前は真路(まろ)だし、結構涙もろいし、子供好きなのに顔面のせいで子供に泣かれるタイプだ。
「小説は誇張して書いてあるんだってば」
「でも一目でズババッて当てるんじゃん!」
「だから虚構だよ。この人にそんな力ないって」
「おいこら、」
「いつも罫の後手だったんだから、警察なんて」
「質面倒臭ぇ後始末してやったのは誰だと思ってんだ」
「宝石は盗まれるし予告殺人は止められないし、散々だよね」
「あ? なんだテメェ、やんのか?」
「その口の悪さどうにかしなよ、公僕だろ」
喧嘩すんなよ、と両者を止めに入った倫太郎がフードから手を離した隙に、ひっぺがす。
「なんだ。ちんちくりんな服着てるから顔もヘンテコかと思ったら、可愛いな」
「可愛いとかやだ!」
「すまんすまん」
もうすっかり鬼川署長は倫太郎を気に入ったらしい。しかし例のごとく、子供側は彼から逃げる。僕の後ろに隠れて、またフードを目深に被った。
「可愛くないから、おれ。どっちかといえばかっこいいほうだから」
「はいはいかっこいいかっこいい」
「二人で言ってください。ちゃんと。心から」
かっこいい、と何べんか言わされた。そのうち、倫太郎は少し落ち着きを取り戻したようだった。
「名前は?」
「…………………………田中太郎です」
明らかな偽名に、署長の口元はまたピクピクと痙攣する。そりゃ目解幸多とは名乗れないよな。派手な服装の子供と、署長の対面はそこまでにして、僕は地下倉庫の入室許可を請う。
「なんだ。二度と来ねェと思ってセイセイしてたのによ」
鬼川署長は待ちくたびれたように、呟いた。
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