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冷たい地下室のとある部屋は、かつての栄光の残骸であふれていた。名探偵目解礼介シリーズの中で、最大の敵として、何度も現れては、なかなか捕まえることの出来なかった怪人。ようやく捕まえたと思ったら、脱獄せしめた神出鬼没の犯罪者。最終巻でようやく引っ捕らえ、物語は大団円を迎えた。
小説と事実は違う。
本当は、捕まえることは出来なかった。
「これ、怪人のマント?」
「そうだよ」
二人きりにしてくれと頼んだら、あっさり鬼川署長は引いてくれた。本来あり得ない待遇だが、そもそもこの部屋の存在じたいも、ここに勤めている人でさえ全員が知っているわけではない。
………………あのとき、怪人を、わざと逃がした。
誰も知らない秘密。
罫にも、鬼川署長にも、僕は言わなかった。
「全部本当なんだ………」
感動している子供を、後ろから眺める。からくり時計、魔法のステッキ、綺麗にファイリングされた犯行声明、蝋人形、どれもを倫太郎はじっくりと眺めては、ため息をついている。感情が昂ると、逆に彼はおとなしくなる。集中しているのかもしれない。いつぞや、僕の肩に触れたときの彼を思い出す。
沈黙の続く部屋で、僕は彼に声をかけた。
「倫太郎」
「うん」
「君ならどう推理する?」
「何を?」
「怪人の正体」
無表情のまま、倫太郎はこちらを見る。
怖いほど痛いほど、部屋は静寂を保つ。
そのあとで、倫太郎は、めっちゃふざけんのが得意な人、と答えた。
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