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それが僕らの、最初の事件だった。
摩訶不思議な謎は、ほどなくして解決した。タネが分かってしまえばああなんだ、そんな単純なことだったのかと思える。冷凍の謎、鳥人間の技術を用いて計画された犯行、無色の殺意──素人で子供の僕らが、まさか犯人を引っ捕らえることなど出来るわけもなく、しかし、罫の気付きや僕の余計な発言がなければ、警察は犯人を逮捕できなかったともいえる。警察との珍妙な関係もこうして始まった。
「なあ、罫」
ある日、僕は彼に言った。罫はいつものごとく、我が物顔で僕の部屋に寝転がり、漫画を読んでいた。
「君は僕なんかとつるんでて、いいのか」
「どういう意味だ?」
「……君には他にも友達がいるだろ」
「うん。それで?」
「刑事ごっこは楽しいだろうけど、罫の将来に役立つとは思えない。無駄なことに時間を費やしている場合じゃないだろ。それに、佐々木や野間達といたほうが、楽しいんじゃないのか」
「……人の行く末を案じるとは、随分と余裕があるね」
罫は身を起こしてこちらを見た。
「あのなあ、礼介。俺はちゃあんと自分の時間を有効に使ってるぜ。第一、今の俺が充実してなきゃ将来もない。第二、他の友達とも交遊してる」
「……………そうなの」
「そうだよ。水泳をやったり、スキーをしたりさ」
「……………………」
「誘ってもお前、どうせ来ないだろ」
「………………………うん」
「だから誘ってない」
「………………………うん」
「第三、俺には夢がある。学生のうちはやらないが、大人になったら始めようと考えている」
何をするつもりなのか、その時は教えてくれなかった。やがて僕は、この話を忘れてしまった。大学を出て、実際一人前になったあと、罫は小説を書き始めた。
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