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お帽子ついたる服! と意気揚々に我が家へ乗り込んできた倫太郎は例によって躍りだし、僕は手拍子を催促される。珍しく無地のパーカーだが、デザインは独特で、色も黄色のような橙のような、やたら目につく明るさだ。
「パーカーの語源はパークウェアです。転じてパーカー。公園に着ていけるようなラフな服。ポッケとお帽子が大事」
「そうなの?」
違うんじゃないかと思いながら聞き返したら、本当は違いますと返された。
「本当はネネツ語でしたー。じゃじゃーん」
「はいはい」
「……えっ、本当に」
「はいはい」
本当なんだってば、と倫太郎は僕にすがる。
「はいはい。ネネツ語。カッタリィーヤ語。次はなんだ?」
「えっ、えっ、ちょ、待って今回はマジだから」
「お帽子?」
「お帽子! あとポッケ。大事」
何故だか勝ち誇って倫太郎は言う。
「大事ですか」
「大事だよ。ポッケにはいいものが入っているよ」
「たとえば?」
「なんでしょう。あててみて?」
取り出したるは小さな紙包み。開けば、ガラス製の亀が現れた。きらきらと丸い緑に、半透明の手足と頭。
「あら可愛い」
「可愛いでしょー。作った」
「……………作った?」
聞けば、課外学習でもの作りの体験をしたらしい。
「なんかねー、保育とか介護とかつまんないじゃん。どうせボランティアでも行くから。みんなそれが楽だって選んでたんだけどお。どうせだったら人生でやんないだろなってことしたくて。あのね他にはね、テレビスタジオとかハングライダーとかトリマーとかあったんだけど」
「……可愛い」
手のひらにのせて眺める。光を含んで、内側から輝く亀。
何故、亀。
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