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「おれめっちゃ上手じゃない?」
「うん。芸術の才能がある」
「……………えへへ」
相変わらずゼロ距離で話す子供を、今日は僕から手を伸ばした。自分は積極的に人に触れてくるくせに、やはりこちらから抱くと緊張するようだ。驚いて言葉を詰まらせた倫太郎は、しばらく大人しくなった。
────嫌な夢。
触れているこの感触が、熱が、現実だと思い知る。思い知るために触れる。
「礼介くんは、あの、え、課外学習とかあったの?」
「…………うん。あったよ」
「あ、え、あ、そうなんだ。何した?」
当時の課外学習は、今でいうインターンやアルバイトのようなものだと僕は話した。仕事の真似事。実際、軽い雑用。数日間かけて行われる実地体験。
「へえ、うらやま」
「そう?」
「だっておれら一日だけだからさあ。……それで? どこ行ったの?」
親の手伝いだと嘘をついた。どうして嘘をついたのか考える。理由はいくつも思い浮かんだ。
出会った頃よりも伸びた髪を撫でる。この子が大人になったら、どんな風に育つのだろう。顔を、姿を、想像しても沸いてこない。何の仕事をして、どんな生活を送るのか。…………
倫太郎の肩の力は抜けないままで、鼓動の速さも伝わってくる。触られるのが嫌かと聞いたら、ううんと小さく返事があり、向こうから抱きしめてきた。
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