アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8
-
───
一応、僕のもとへ来ている理由は忘れていないようで、毎回外出の提案はなされる。
「涼しくなってきたしさあ。お散歩どうでしょう」
「遠慮しておきます」
「なんでよ、もう。おれがいるから大丈夫なのに」
「その自信はどこからくるんだ」
「喉から」
「………………」
「貴方の自信はどこから? わたしは喉から!」
「………………」
「そーゆー冷たい無視やめて」
「絶句という」
「五言絶句」
「それは知ってるのか」
「授業でやった」
日の暮れる気配を窓辺に感じ、僕は倫太郎に尋ねる。
「例えばさ、出掛けるとして、どこがいい?」
「んん、そのへんでいいからさあ」
「そうじゃなくて。理想だよ」
「…………んーとね。遊園地、野球場、動物園、水族館、博物館、あ、トーハクとカハク、あとは海、山、川、えーと」
でもやっぱり近所でいいや。最後はそう言って、倫太郎は僕の腕のなかで笑う。
「どうして?」
「だって名探偵はこの街が舞台だもん」
どうせなら小説の聖地巡り、と倫太郎は目を輝かせた。出来ることなら叶えてやりたいが、一歩外を出れば懐かしく忌まわしき災難に見舞われることは、容易に想像がつく。長年引きこもっていた僕が、この短期間で二度も外出したことがむしろ特異すぎるくらいだ。
「紅葉狩り行こうよ」
「行かない」
「ぶどう狩り行こうよ」
「行かない」
「んんん、じゃあ、刀狩り」
「行かないなあ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 387