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倫太郎は僕を見つめる。どうして気付かなかったのだろう。いや、初めから気付いていた。初対面の時点で、警報は鳴っていた。どこか懐かしさを感じると。
「何言ってんの。おれが礼介くん連れ出すんじゃん。会えなくなるとかないよ」
「そう?」
「そうだよ。馬鹿なの?」
「酷いこと言うなあ」
「礼介くんが変なこと言うからじゃん」
「ごめんね」
「許す」
「……じゃあ約束」
「なんの?」
「来年もまた会うこと」
「握手でいいの?」
「うん」
「指切りじゃない? 別にいいけどさあ」
「紳士だからね」
僕の差し出した手を彼は何のためらいもなく握る。そのまま彼を抱きしめた。子供はびっくりして固まる。
「…………………紳士ってハグする?」
「しないかな」
「んふふ…………え、え、え、どうしたの。なんか礼介くん、変だよ」
そうかな。呟いて、僕は目を閉じる。
目を覚ましたら僕はまだ高校生で、罫がいて、人生はこれからで…………………………………
……………………………そんなことはないのだと、まぶたをゆっくりとあけた。腕のなかにあるこのぬくもりが現実だと、わかっていたから。現実は重たくて億劫で、ちっとも思い通りになんかいきやしない。
言いたかったことを言えずに、微笑んで、自分にとってはどうでもいいことを口にするのは得意だ。僕の一部は臆病で出来ている。
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