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1月。
不満や徒労を今日だけは消して、新年は迎えられる。普段は難しい顔をしている苦労人達は、穏やかに歓談しており、僕の登場に気付いた者だけが、驚嘆の表情を浮かべ、硬直した。
目解家、本屋敷。
雪の積もる日本庭園は美しく、寒さは余計な緊張を誤魔化すのに便利だ。
まるで毎年来ていますと言わんばかりの慣れた様子で、僕は奥へと進む。洋服は苦手だ。余計に痩けた体が目立つ気がする。かといって、老人やご婦人でもないのに、着物は目立つ。
声をかけようとしてくる者を避け、目当ての人物をようやく見つけた。大人ばかりの世界で、背の低い子供は逆にわかりやすい。
サプライズをするつもりは、なかった。
およそ半年前のことなのに、やたら出会いは懐かしく回想される。変な服を着た子供。他の大人の前では、きちんとしているらしいこと。歌の上手なこと。すぐ踊り出すところ。
こんな人前で顔を会わせるのは、彼に酷だろうか。それでも、物語はとうに始まっていたのだ。幕は開かれていた。灰色の世界から、薔薇色の未来へ……そんな大層なものではないけれど。
二度と、心の揺らぐことがない人生を望んでいた。人と関わらず、世情も拒絶して、ただ息をしていた。
それでよかったのに。
ああ、そういえば、この名前を呼ぶのは初めてだ。
「幸多さん」
僕の声に、子供は振り向いた。そして、その表情は、みるみる驚きに変わっていった。
やわらかそうな赤い頬、内気な瞳、作り笑いに疲れた口元。ピンとした白い襟の覗く、スカイブルーのセーター。
背の低い、小肥りの男の子は、倫太郎とは似ても似つかない。
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To be continued ...
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