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エピローグ
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エピローグ
日本庭園。初夏の日差し。
母の姉がうちにやってきた。理由は重々承知していて、ぼくは本当はその使命をこなすのは嫌なんだけど、とても美しい人がわざわざぼくに会いに来てくれて、ぼくと話してくれることが嬉しくて、素直に従ってみたり、突っかかってみたりする。甘えている。初恋。……それは言い過ぎ……だけど、ぼくは特別におばさんが好きなのだった。だってものすごく美人で、物腰も柔らかくて、でも優しいだけじゃなく強くて正しくて、天使みたいだから。
「礼介さんのこと」
愛しい人の名を呼ぶときみたく、彼女が微笑んで言うから、ぼくは勝手に少し傷付く。おばさんに他意はないのだ。彼女はいつもこういう喋りかたをするし、ぼくは恋心の真似をしたくて、わざと穿ったものの見方をしている。
「目解家の家訓は?」
「…………………………人に優しく」
「お願いね」
そもそも最初から断れない話を、ぼくは渋々といったていで引き受けた。あとで一人になり、激しく後悔した。
目解家は皆聡明で、人格者で、長身痩躯だ。ぼくだけが違う。なんでぼくだけが違うんだろう? でぶっちょだし、背は伸びないし、勉強だってそこまで出来ない。びくびくしてるから友達だって少ない。……いつも、得体の知れない何かが怖い。後ろめたい。まるで大きな犯罪を隠しているような気持ち。ぼくは本当は目解家の子供じゃないのかも。そんな悪夢なら、散々見た。病院で新生児のときに、取り違えられたのだ。だからお前はそんな見てくれなんだな。父が吐き捨てる。道理で心の美しくないわけだわ。母が呆れている。
──やだなあ。
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