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倫太郎に、目解家の人間として振る舞うための猛特訓は必要なかった。彼の物覚えのよさは人並み外れており、家訓もしきたりもすぐに掌握した。それに、あの見た目なら、ひょっとしたら名探偵は替え玉だと気付かないかもしれない…………。
倫太郎が名探偵のところにいる間、ぼくは他の友達としたかったことをして、行きたかったところへ行った。ぼくの知らないところで青空は広がり、いろんな人がいて、街は鮮やかだった。
親へ話すために、ぼくは倫太郎から今日の出来事を聞き、倫太郎はぼくの話を聞いて喜んだ。時々の心苦しさに気付かないふりをして、ぼくは監視の目を逃れた自由な時間を貪った。…………だって、昔からこうやって遊びたかった。みんながしているように、友達と過ごしたかった。…………
「どうせなら倫太郎とも遊びたかったな」
「それあるー。でも、ま、しゃーないし?」
倫太郎が飄々と応えてくれるのが救いだった。
どうしてそこまでしてくれるのか。ぼくなんかのために。
「ええ? だって、面白いし」
それにおれ、幸多のこと、好きだし。ふざけて抱きついてくる友人のことを、ぼくも大好きだ。尊敬している。
長年引きこもっていた大人が……ぼくらより賢くて、知識もあって、経験もある人が……たかが子供の訪問ごときで、懐柔されはすまい。ぼくも倫太郎も、そう思っていた。
だから、新年を迎えて、名探偵が目の前に現れたとき、ぼくはめまいがした。
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