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倫太郎をずっと抱きしめたままで、話をした。この子が泣いたときにあやす大人は、いただろうか。無条件に愛して、抱きしめてやる大人は、いたのだろうか。
「てゆーか、普通に外出れんじゃん。ムカつく」
新年会のことを蒸し返されて、僕は何度も謝る。久しぶりに外に出たので、雪に触った日のこと。嘘がバレて泣いてる子供を、あやそうとしたけど、あれは余計に泣くタイプだと思って会話だけをそのまま続けた。あとやっぱり、目解家本家のご子息は、普段着に襟のピンとしたワイシャツを着る。ヘンテコな服は着ない。
「それにしても幸多は可愛かったな」
「ああ、うん。あいつ超可愛いよね。気にしてんの、見た目のこと。そんなに重要?」
「いや、まったく。でも本人はだいぶ気に病んでたようだね」
「そうなんだよね。あのぷくぷくほっぺ、おれ超好きだけど」
あ、でも盗んないでね、あれはおれのだからね。そんなことを言う倫太郎に、はたと僕は気付いた。
「好きなんだ?」
「え、え、そりゃそうでしょ友達だし」
「恋愛として」
いつぞやの言葉を返してみる。倫太郎は固まって、それから、焦りだした。
「え、え、え、あの、ええと、あの、」
「そうなんだ」
それはそれは。まあ思春期特有の鬱屈した感情を同性との友情に昇華するのはやむなし、性的成長の過程で疑似恋愛はままあることよな、と心を落ち着かせる。僕と罫のいた頃とは時代が違うのだ。
「……っ………………本人には言わないで……」
「うん。わかった。言わない」
蚊の鳴くような声で白状した倫太郎に、同じ口調で伝えた。
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