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公園は、当たり前に誰もいなかった。
まあ初めてのお散歩ならこのぐらいの距離かな、と思う。隣が墓場なんて嫌だと、親もあまり子供をここで遊ばせたがらないし、子供はここにはお化けが出るとか呪われるとかで来たがらない。治安悪い。でも引きこもりにはちょうどいいよね。誰とも会わないし、うるささもない。
目的地について、礼介くんはホッとしたようだった。おれを見て、おれをいじめる。おっさんめんどくさいよう。
スケラマッチョにインスタ返しとこ。適当に写真を撮る。言語を用いない生き物と交遊をはかるには他の感性。滑り台でも撮っとこうかな。高いとこに登って、カメラを起動する。むこうの繁みに生き物発見。姿はまったく見えないけど確実にいる。なにしてんだろ。青姦か露出狂かな。
礼介くんは墓場のほうばかり見ている。白っぽい着物っぽいいつもの服だから、やっぱり礼介くんじたいがお化けみたい。冗談じゃない。縁起でもない。
おれはさっさと写真をおさめて滑り台を滑って駈け足。消えちゃいそうな礼介くんの腕にしがみついた。いなくならないで。
名探偵はよくわからない、という風におれを見た。
「人間はそう簡単には消えないよ」
「必ずどこかに仕掛けがあるはずだ?」
「……なに? それ」
「『笑う透明人間』での台詞。自分で言ったの覚えてないの?」
「そんなこと言ってないよ。罫はだいぶ脚色して書くから……」
あ、また。
当たり前のように、いない人の名前を口にする。愛とうんざりの同居する友情。長年の積み重ね。もういない人なのに、いまだに礼介くんの中で重要な位置にある人の名前。まるでまだ隣にいるみたいに、友人の名を呼ぶ。ねえ礼介くん。もう全部、昔の事なんだよ。
早く乗り越えてよ。
その先に、おれが今、こうしてここにいるんだよ。
ずっと何かが、わからない、というような瞳をしていた礼介くんは、墓場のほうを見て呟いた。
「誰もいないんだな、もう」
おれがいますけども。
泣きたいのはおれのほうなのに、涙をこぼしたのは礼介くんのほうだった。
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