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ポタリとこぼれた雫に不思議そうな顔をして、そういえば人間には悲しみとか悲しいときは泣くとか、なんかそんな機能がありましたね忘れてたけど、みたいな感じで拭って、失礼と断って去る。紳士かよ。大号泣するんならよしよししてあげよっかなとあとを追おうとしたけど、礼介くんのことだからきっとあれ以上泣かないに違いない。泣くにしてもおれがいたら我慢しちゃうんだろう。大人って、そういうとこ、ある。
それより気がかりな繁みに全力ダッシュする。礼介くんが無自覚な死体発見器なら、おれは無意識の事件発見家だ。トラブルメーカーとトラブルシューターの間。繁みの中で、今さっき首を吊った人がバタバタもがいてるのをさっさとロープ切って蹴っ飛ばして公園から追い出す。死のうとしてんじゃねえよ。大声で怒鳴るわけにはいかないので、おれは低い声で怒る。涙を流して、そうだよね、ありがとう、と自殺志願者は去っていった。
いやいやいやいや! あんたが生きようが死のうがどうでもいいんだけど!
帰り道はこっち付近から帰ろうとしてたんだよなあ。もしあのまま事が進んでたら……と考えて、ゾッとする。うわあ礼介くん。腐っても鯛的なとこあんじゃん。
公園の端から、礼介くんのいるところまでダッシュした。
「何してたんだ」
「うん? 悪霊退散ダンス」
適当に誤魔化しても騙されてくれるから、礼介くん大好き。
「帰ろっか」
とおれが言ったら、
「そうしてくれると助かります」
大人は小さく頭をさげた。お疲れちゃん。
礼介くんのほうから手を繋いできたことに、びっくりするけどポーカーフェイスしておく。洗ったばっかの手のひらは、冷たくて熱くて不思議な感触。
「礼介くんインスタやんないの」
「……知らないものはやれない」
「え、え、え、」
「携帯電話持ってないからねえ」
「携帯電話とスマホは違いますけども」
「そうなんだ」
「インスタ……え、ツイッターは? フェイスブックは?」
「わからんなあ」
「わかれよー」
「インスタって、なあに」
「イ……インスタントカメラ……の、現代版」
「写真?」
「写真」
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