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「直接お会いしたことは少ないのですが、世間並には存じております。何度か旦那様を探偵事務所までお送りしたこともございますので」
衝撃の事実。当時を知らないおれらは、身を乗り出して鈴木さんにたずねる。
「ねえ、名探偵ってやっぱりかっこよかった?」
「マジでこの街であんな派手な騒ぎやってたの?」
「帝東ビルからの空中おいかけっこ」
「ハングライダー!」
「アドバルーン!」
「銀行通りで謎のダンス集団。そして消える五億円」
「予告状が町中にばらまかれたり」
「時計台に隠された秘宝」
「怪人サーカス」
全て事実でございます。鈴木さんはちっとも興奮せず、穏やかに微笑している。
「え、え、え、じゃあさ、礼介くんの恋人知ってる?」
乗るしかないこのビックウェーブに。ああ、あの人ですかと鈴木さんは思い出したように言って、おれの心臓はドキドキしだす。手のひらが熱い。
「遠くから見かけたことがあるだけですよ。何か狙われているとかで、姿を隠しておいででしたから」
小説の中には出てこないから、世間一般は礼介くんの恋人の存在を知らない。名探偵は特別な存在を親友以外に作らなくて、この街や世界のために奔走して、怪人は見事逮捕されて大団円。
一部の人だけが知っている事実は、こうだ。夢幻が死んで逆ギレして、怪人は礼介くんの恋人をさらって消えた。そのあと怪人が逮捕されたときには、女の存在は消えていた。きっとどこかで殺して死体はもう見つからないんだ。怪人は死刑台へ。
そして現実は、怪人は彼女をさらったまま逃げおおせた。……そして、おれは産まれた。
真実が、知りたい。
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