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「妹いますとか」
「二人兄弟だよ」
「空飛べますとか」
「飛ばない」
「水ひっかぶると女になるとか」
「ならない」
「月光仮面の正体」
「僕はおじさんだけど僕ではない」
「あ、隠し子いるとか」
「はは、いたらどうしよう」
笑うじゃん。
いろんな感情が沸いてきておれは抑えるためにおとなしくする。ぶわわってなってる。内側。……いるわけないとか困るとかありえないとか、もっと冷たい反応だってあったかもしれないのに。そんな柔らかい回答もらったら期待しちゃいますよ。
たとえばお母さんが怪人にさらわれた時既に妊娠していました、みたいな世界線だったらどうなるんだろう。残念なことに、月日を計算するとその可能性はゼロだし、産みの親より育ての親ってレベルで語れないほどおれは怪人の遺伝子を色濃く受け継いでいるし、ないんだけど。
つーかいたらどうしようって、心当たりあんのかよ。
「…………そんな冷めた目で見るなよ。冗談だよ」
名探偵は黙ったおれに手をのばす。いやです。身を引いた。ちょっと今は頭撫でられたくないです。だって礼介くんのこと、どう考えていいのか、わからなくなってきた。幸多役のおれはとっくに舞台から降りてる。客席で眺めてんなよ。お前の出番だよ。
「お心当たりがおありで」
「ないです。ないです。なんで急に怒るんだよ」
「怒ってないけど。ばっちい。けだもの」
「…………あのねえ。君もう高校生だろ」
「知らないぷん。そういう問題じゃないぷん」
「君の中の僕は聖人君子か?」
「ううん。名探偵」
「小説はあくまで小説です」
「モテないとか言ってたじゃん」
「複数に好かれる必要性はない」
両手を合わせて、礼介くんは机にひじをつく。指輪。おれは視線を隠さないし、礼介くんも堂々とそれを撫でる。あったはずの、ありえたはずの未来の残骸。
「…………その人とはどうなったの」
おれのなかで一番残酷なおれが聞く。どうだったかな、とはぐらかす礼介くんに、どうして結婚しなかったのと次の質問をする。
「…………そんなに気になる?」
「なる」
「ふうん」
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