アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5
-
実は名探偵はおれが怪人の息子だと気付いていて泳がしていたのだ。そして今日逮捕なのだ。
車に乗せられて、ドナドナ状態。おれの様子に気付いても、礼介くんは話しかけてこない。怖い。
逃げたい。
警察署の前に着く。パトカー。制服の警官。おれ、悪いことしてるけど警察は嫌いじゃないんだよな。っていうか、むしろ、好きサイド。あと自衛隊とかレスキューとか消防車とかも好き。だって、もう大丈夫だよって、茶色い世界から助けてくれたから。
もしおれが自由なら、たぶんそっち系の仕事についてた。でも現実的に無理。おれは気まぐれだし落ち着きないし、パニクるほうだし、本当の両親について調べられたら困る。
びくびくとしながら、礼介くんの腕に絡まっておれは歩く。自動ドアのとこで深々とかぶってたフードを脱がされて、背中を叩かれた。
「いつもの奔放さはどこへやった」
「だって、警察。なんで? 何もやってないです、僕」
「どういう心境?」
「小市民」
「堂々としてないと逆に怪しい人だ」
「何にもしてないのです」
「知ってるよ」
礼介くんは笑う。あれ、おれの逮捕じゃないの?
署長を呼び出す礼介くんを後ろから眺める。遠くからみてもイケメン。受付の女の人も、礼介くんのこと、秒で好きになってる。漫画かよ。
あの人は何を考えて今日、ここに来たんだろう。名探偵の行動は不可解だ。だからこそ読者はビックリどっきりワクワクなんだけど、今のおれはただの挙動不審。メンブレ。だってこんな終わりかたって、ない。もっと自由でいたかった。好きに遊びたかった。シャバで面白おかしく生きたかったぜ。
犯人の心境。
「いいかい、倫太郎。残暑見舞と書いてイヤガラセと読む場合があるんだよ」
普通にイライラする。ネタばらしが遅いのもほどほどにしろよ。名探偵は若い警官に話しかけられて、穏やかに受け答えしている。はあ、かっこよ。ドラマよりドラマチック。ファンタジーよりファンタスティック。
………………本当に名探偵だったんだもんなあ。
この人になら捕まってもいいか、って、なる。
いや、ならんわ。
捕まりたくないです。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
86 / 387