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あれもこれもそれもどれも楽しくて、嬉しくて、おれは集中する。小説で読んだ事件のリアル。この道具、お父さんならこう使うはず。あの筆跡。お父さんのじゃない。蝋人形。よく思いつくよ。からくり時計。もの作り得意だったもんね。
目の端でおれは名探偵をとらえる。おれを見ている名探偵は何を思う。彼は何をしにここへ? どうしておれを連れてきた?
「………………」
「……………………」
「倫太郎」
「うん」
「君ならどう推理する?」
「何を?」
「怪人の正体」
設定を考える。
名探偵の新しい相棒が子供だっていいじゃないか。また同世代はつらいだろう。新しい風をふきこんで、物語は再び動き出すのだ。間抜けな半人前の助手は、とんちんかんな推理ばかりする。そしてそれが、たまに的を得てたりするのだ。
というわけでおれは迷推理をかます。
「めっちゃふざけんのが得意な人」
そのあとでアホな言葉を続けようとしたけど、駄目だった。くしゃくしゃくるくるの髪の毛。小さい目。よく動く顔の筋肉。湯船にタオル入れて作ってくれたくらげ。教わったパントマイム。手品。人間の決めた善悪とか悲劇なんて、宇宙の前では全部喜劇で、もっと遠くから見たら、ないのも同じ。机も棚も滑り台も作ってくれたから、おれは世の中にある全部のものはお父さんが作ったんだって思っていた。お父さんとお母さんは全然違う考え方を持っていて、でもだからって喧嘩しないし、よく笑っていた。二人がちゃんと幸せ
だったから、おれは安心してただ愛されてた。
疑いようもなく、愛されていた。
短い間だったけど。
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