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「結局イヤガラセって、なんだったの」
帰りの車の中で、おれは礼介くんに聞いた。
「僕の顔を見せにいくこと」
なんだあ、そりゃ。おれもある意味イヤガラセ受けたよ。はあ。逮捕されなくてよかった。バレてたわけじゃなくてよかった。どこが名探偵だよ。ホッとしたから、心の中で悪態をつく。
礼介くんはどこかよそよそしい。まだ緊張している。愛想笑い。あまりこちらを見ない。見てるようで見てない。……違和感。呼んだくせに帰れとか言う。自由かよ。
「おれになんか隠してることあるでしょ」
「ないよ」
ありよりのありで礼介くんが堂々と嘘をつくので、おれはしがみつく。だいたい、幸多の家まで送ってもらっても、困るのですけど。それは一番駄目なやつ。だから、ちょっとしつこいぐらいおれは駄々をこねる。幸多なら、おれなら、とっくに引き下がってんだろうなあってラインを飛び越える。いや、そりゃ、出来るなら帰りたいですよ。シャワー浴びたいし。礼介くん、困ってるし。でもでもね、出来ないことはやれない。
「一人で楽しいことするつもりでしょ」
「……………………どうであろうなあ……」
「お供しますぜ旦那様」
「…………」
「おれたちが! ついてるぜ! シャキーンシャキーンシャキーン、デュワデュワデュワデュワ」
「なあに、それ」
「変形ロボット。あとこっからボゥワーッ」
「……………」
「ボボボボボ。ホバリング」
「……………」
「シカトきっつ」
「……あ、ごめん。何を言えばいいのかわからなくて、……」
「こんなときどんな顔すればいいのかわからないの? てか?」
「……無視してるつもりはないよ」
「わかってるよ謝んなよマイメン。テンションあげてこーぜ。ほらほら一年。追いついてないよー」
手を叩いて催促。礼介くんこのキャラと一番相性悪くて好き。良き。
「ねえねえ、おれがなんか言ったらさーあ? あっ! あの声は! って言って?」
「うん?」
「やれやれ……。一人で行こうなんて、水臭ぇじゃないか」
「……あ、あの声はー」
「主人公先輩! んで、こっちから、わたしもいるわよ。ヒロインさん! おやおや、僕を忘れないでほしいものですね。眼鏡先輩……っ!」
忙しく一人芝居してみせる。パワー馬鹿とやんちゃ天然とオドオド鬼畜まで登場したあたりで、礼介くんは口元を抑えて、少しだけ笑った。馬鹿だなあって、おれに呆れる。でもその笑顔はあんまうまくいかなくて、苦くて、新品の真っ白な紙をわざとくしゃくしゃにして台無しにしたときのようで、窓の外をむいてしまう礼介くんはそのあと、おれと話す気がない。
なんで今日、そんな変なんだろ。
メンヘラ地雷系おっさんはさすがに流行らないと思うんだ。
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