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礼介くんが不思議な生き物を見る目でおれを見てきたから、おれもそれで返す。だってジェットコースターは楽しいもの。
「礼介くんあれ乗ったことある? 大阪の。あのねえ昔、音楽が流れてて」
説明しても伝わんなくて、なんなら微塵も知らないっぽくて、おれは歌う。踊る。正座まします礼介くんに、手拍子の催促。
「ほんまに知らんの?」
「知らんなあ」
エセ関西弁で聞いたら、のほほんと返された。
「礼介くん、音楽聴かないの」
「そうだね」
「もったない」
「今日は可愛い服着てるね」
え、これ?
びっくりして袖を引っ張る。適当に選んだのに、褒められた。いつも無言でバカにしてくるか、なんなんだそれはって実際ケチつけられるのに。
デートの日に、時間なくて、メイクもヘアスタイルも適当で、でも彼氏にいつもより可愛いって言われた女の子の気分。あっけ。ぽかん。しょぼん。おこ。でもおこは取り消し。だって可愛いって言われたから。って、おれは、女の子じゃないから、可愛いよりかっこいいって言われたいよ。
「……思ったんだけど礼介くんがただ単に柄物嫌いなだけでは」
「うん」
こんにゃろ。
「パーカーの語源はパークウェアです。転じてパーカー。公園に着ていけるようなラフな服。ポッケとお帽子が大事」
ムカついたのでロボット口調で堂々と嘘をつく。歩くアンサイクロぺディアとはおれのことよ。ででん。ピコピコ。C-3POの物真似。でも礼介くんがそうなの? って普段より30%増の興味を持って聞いてきたから、本当は違いますとすぐに白状した。
「本当はネネツ語でしたー。じゃじゃーん」
「はいはい」
あっ、嫌われた。そっぽむかれた。うーん。どっちもおれの中では実在する言語なんだがなあ。なんだかなあ。拗ねるおっさんに、いいものあげようとなぞなぞかます。ポケットの中身はなんでしょう。ビスケットでもないし、ライオンでもキリンでもない。畳に膝をついて、ポケットからつまらないものではございますがの最上級を渡す。
亀。
こないだ学校の授業の一環でやった、もの作り体験。簡単なガラス細工。そういうの好きだから楽しみにはしてたけど、幸多が熱出して休んだから、おれ的には無の一日だった。良くいおうとすれば、無理をすることになる。悪くいうのは、普通に惨めで悲しい。だから言葉をくっつけないでおく。そんな一日。
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