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『いや、なんでやねん』
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『いや、なんでやねん』
膵臓癌だと診断された。
ステージ3 だと言われたがそれも時間の問題だとも。
俺は冷静だった。
ただ平然と「そうですか。」とだけ返した。
無性に家に帰りたくなった。
無性に友達に会いたくなった。
無性に過去を振り返りたくなった。
無性に、、、、、迷惑なメールを送り付けたくなった。
誰とは言わないが。
抗がん剤治療を受けるには親の同意書が必要だからと、明後日退院することに急遽決まった。
多分、俺は抗がん剤治療を受けない 選択をすると思う。。。
もちろん、痛いからとか、しんどいからとか、髪の毛が抜けるからとか、
美味しいものを食べれなくなるからとか、ベットで寝たきりになるからとか、
そんな子供じみた理由もないわけではないが、それより……
あ、ちょっと待って。
『それ俺のセリフや』
残業終わりという可愛いのか気持ち悪いのか良くわからないキャラクターのスタンプと共に返事が送られてきていた。
この人、関西人でもないのに乗ってきてくれるとこ、ほんと好き。
早く会いたい。
直接会って話して、そんで一緒にゲームして、お互いの趣味とか、恋バナとか、武勇伝とか、色々話たい。
とか思ってるあたり重症だわ。色々とアウトだ。
うーわ、俺まじでキモい。死のうか?一回サクッとやっとく?
『残業お疲レンコン節』
俺は1分後に返事をした。
いつもより激しめのボケをかまして。
『カオスで回収しきれねぇよ』
『女ウケする映画教えて』
そして彼もまた1分後に返事を返した。
こんなどうしようもない事まで回収しようとしてくれる彼の優しさだけで十分満たされた。
そして、程なく満たされた液体は黒く濁る。
病院のベッドから動くことを許されないこの俺の現状を差し置いて、自分は女の子とデートですか…あぁそうですか。
ツンケンしてホントみっともないと思う。
でも、
「どうせ先の短い命だ」
なんて考えてしまった自分がいてゾッとした。
俺、死ぬんだな。って、、、
これから死ぬ為に色々と準備する期間に入るんだな。って
急に目が覚めた様だった。
『サクッとホラー映画でいいんでない?』
ほら、恐怖で心臓が止まっちゃうかも、なんて
びっくりして膵臓破裂しちゃうかも、なんて
今の俺にはそんな些細な冗談ですら言えないなんて
随分と損をした気分だ。
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