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『MVPじゃワレ』
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『MVPじゃワレ』
「ただいま〜〜」
2週間ぶりくらいの我が家は以前と何も変わっておらず、これまでに感じたことも無い安心感のせいか、一気に眠気が襲ってきた。
「はい、おかえり〜」
俺の背後に立って靴を脱いでいた母親が緩く返した。この感じすらも懐かしくて、今までにない恋しさを感じた。
「ピザありがと」
お昼ご飯にピザをご馳走してくれた母親に一言礼を言った。
我が家のルールでは自分で金を稼ぎ出したらなるべく自分のためだけに使え。というものがある。
だから本来このピザは俺の分は自分で払わなければならない所、母親が善意で奢ってくれた。
それだけで嬉しかった。
「たまにはね。じゃ仕事行ってくるからゆっくり我が家を堪能しときな」
そう言って母親は冷蔵庫からお茶の入ったペットボトルを取りだし、一杯だけ飲んでそのまま家を出てしまった。
俺は出されたままのペットボトルを冷蔵庫にしまい、言われた通り我が家を堪能することにした。
部屋の中央に置かれたお気に入りの三人掛けソファに脚を乗せて寛ぐ体勢をとった。
『なんの?よくわかんねぇけどありがと』
わざわざ俺の退院する時間帯だけ器用に仕事を抜けてきた母親とは入院が決まった日以来会っていなかった。
別に仲が悪いとかじゃないが、ただ母親は仕事を生き甲斐にして生きてる人だと言うだけだ。
退院するため、一人で荷造りをしていた頃、母親は先生から事情を聞いていたようで俺の時と同様に個室に案内されたと言っていた。
戻ってきた母親は俺を見るなり眉間に皺を寄せて必死に泣かないように堪えていた。そんな母親の姿を見て、ものすごく居た堪れない気持ちになった。
母親は俺の目の前まで来て立ち止まると俺の二の腕あたりを掴んで苦し紛れな声で言った。
その間、わずか五秒
謝られるかも
ごめんねって言われたら何て言えばいいんだ?
もっと早く言いなって怒られるかも
なら怒られる方がマシだ
何も言わず泣かれるかも
そうなったら俺は迷わず抱きしめてごめんって言ってしまうのだろうか
何かしら起こるであろうこれからの出来事にドギマギしながら硬直していた俺に母親は言った。
「この……親不孝ものがぁっ」
後半なんてほとんど声なんて出てなくて、カスカスの聞いたこともない声でびっくり仰天な発言をされた俺は思わず、え?って声が漏れてしまった。
そうなの?って、
そう言う反応なの?って、
疑問だけを植え付けて本人は、早く帰るよ。と通常運転の母親に戻っていた。
母親は強し。とはよく言ったもので、その後ろ姿の逞しいこと。
『MPに選ばれた方にはなんと!!かたかたたたたきけん プレゼント!
いや〜〜めで鯖っ!』
『色々と間違ってんだよなー』
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