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「もしやもやし」
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「もしやもやし」
午後三時、パソコンと繋がれたイヤフォンからガサゴソと雑音が入ったのを聞き、向こう側の住人に声をかけた。
「あ?電話したことない奴の発言」
鼻で笑いながらも応答してくれるとゲーム内でも遠くの方から一人の見覚えのある人物が走ってきた。
装備が以前から少しも変わってない所を見るとよっぽど忙しかったようだ。
「ひどいなー、俺サポートに回るから好きなように動いていいよお兄さん」
俺はこれからいくらでもゲームを堪能することが出来るが、彼は限りがあるから今回は彼の好きなように動いてあげようと思った。
「了解」
そう言えば、この部屋も随分と物が増えたと感じた。
病院に行く数週間前か、一ヶ月ほど前になるのか、忘れたが眠れないほどに腹痛と腰痛に悩まされ、それに加え食欲不信になった俺の部屋は睡眠グッズやら空気洗浄機やら何だかでもので散乱していた。
「そう言えば、ごめんね。会議中とは知らず送っちゃって」
ゲームがスタートし、適当に辺りを散策していた時に俺はずっと謝ろうと思っていた事があった。
「あーあれな。会議の後、上司やら同僚やらに散々いじられ倒したわ」
お陰様で。って彼は言ってゲーム内キャラクターのやたらカッコいいキャラが走り出した。
これが大人の余裕ってやつかなって思いながらその後ろ姿を追いかけた。
いじられたんだ?ってそこから話が進んで彼の職場がとても和気藹々としていて楽しそうだと思った。
そうか、会社ではイジられキャラなのかな?
まあ、そうなるだろうな と何となく納得した。
「俺のおかげかなdarling?あ〜死ぬ!」
職場の人たちと今度、北海道に行くと言った彼に返事をした途端、東の丘の上から撃たれたようだった。
何とか死なずに済んだが致命傷だった。
「え、どこ?」
遅れて俺の少し離れた所にいた彼は真剣モードに入ったようでじっと動かなくなった。
「そこ」
俺は家の塀に身を隠し、回復していたが目の前を通った彼は見事撃たれた。
敢えて詳細な位置情報を教えなかったのはわざと。
俺の長所がこんな時にも出てしまって困ったものだ。
「おいこら、死んだじゃねぇかよ。何でお前死んでないんだよ」
目の前で死んでしまった彼の操るキャラクターが目の前に倒れている。
俺は涙が出るほど笑った。
今時こんな綺麗な死に方する方が珍しいんじゃないかと思うほど見応えのある絵面だった。
「クッソおもろ(笑)見た?死ぬ瞬間、ヤバかったよホント」
俺はコントローラーを置いてティッシュで涙を拭いたにも関わらず、まだ笑いが止まらなかった。
「早よ助けろ。いつまで笑ってんだよゲラ」
俺がいつまでもケラケラと飽きもせず笑っているものだから痺れを切らしてちょっとキレ気味で怒られてしまった。
「はいはいお兄さん起きよーね゛……ぁ」
全回復して、何とか笑いのツボから抜け出した俺はやっと動き出した。
そしてもう既に丘の上を離れたと思っていた敵がまだそこにいた。
「せめて俺を助けてから死んでくれ」
冷静にそう言った彼に対して反論の余地はなかったので素直に謝った。
その言葉まじ、肝に銘じておきます。
「スンマソン・ジェイソン」
二人して死んでしまったのでこれは手始めの練習という事にして次のゲームマッチを開始した俺たちであった。
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