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『パンツォーレ』
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『パンツォーレ』
この度めでたく、私、親戚のひさの結婚式に行って参りました。
あいも変わらず我、両親は仕事に勤しむ毎日であるが為、私と7つ上の兄殿とともに馳せ参じた次第である。
「ねぇ、この日本語で合ってる?」
親族と複数人の友人だけが招待された小規模な結婚式で、簡単にお祝いの言葉を用意しなければいけないという事をついさっき伝えられ、今に至るわけですが、、、。
「やめろ、こんな大衆の面前で。俺が恥かくだろが。」
ひさは殿と同い年で隣町に住んでいたこともあってよく遊んでいた。
殿も正真正銘の兄だが、ひさも俺にとっては兄の様なもので本当に面倒見がよくて、できた人間だ。
真昼の明るい日差しが差し込むチャペルからは綺麗な海が見える。そう、ここは ”ハワイ” なんてことは無く、沖縄の結婚式場に来ていた。
『どこの言葉のなんて意味の言葉?』
彼からの返事を見た俺は下を向いてニヤける。
最近は夜だけでなく、こうして朝でも昼でもやりとりをする様になった。
向こうも俺に気を遣わせているのが気になっていたらしく、この間のプチ事件以降、いつでもメッセージを送ってこいと言われた。
年下に気を遣われるのが癪だと拗ねる彼を見て見たいものだ。
まぁ彼が俺に対してそんな態度取るはずもないので、己の妄想で欲を満たそう。
そう言えば、この人は結婚はしないのだろうか。
ふとそんな疑問が湧いた。
今更ながら、俺と無駄な時間を過ごす暇があるなら、彼女の一人でも作ってこれば良いものを、、、もしや案外ヘタレとか?童貞だったなんて言われたら滑稽だな。
ひさの花嫁が沖縄出身だとかで、ものすごく綺麗で歌が上手い。
それにサーフィンも出来る超有能な花嫁さんで、ひさにはもったいない。
「ひどいなぁ。弟が一生懸命考えた文章を添削もせずにぶった斬るなんて、、、沖縄の海に沈めてやろうか」
俺が適当に書いたナプキンを破ってグシャッと丸めると兄(または殿)は呆れたように俺を一瞥して前髪を整えてくれた。
「黙って座ってろ。俺が適当に話すから。」
自慢じゃないが、俺の殿はとても整った顔立ちをしてる。
しかもIT関連の職業に就いていて文句なしだ。
おんなじ血筋とは到底思えない。
兄はもう既に一人暮らしを始めていて、こうして会って話をするのは久しかった。
手袋を持ったまま俺たちのテーブルに近づいてきたのは本日の主役のひさだ。
「よー!もう来てたのか。二人とも元気だったか?」
相変わらずの髭ズラと肌の黒いこと。
でも今日はそんな姿すらも感慨深く思えてくる。
「ひさ、結婚おめでとう。」
殿が立ち上がり、ひさと握手を交わして軽く背中を叩いた。
あと10分ほどで式が始まると言うのに緊張は見受けられない。
「おめでとー。」
俺も殿に続けて言った。
「サンキューな。イケメン兄弟よ。」
ひさは俺たち二人のことをよくそう呼ぶが、至って普通の兄弟だと思う。
何なら、ひさだって学生時代はよくモテていた。
「ひさの花婿衣装かっこいいじゃん。彼女さんが選んだの?」
俺がひさの全身を見渡して尋ねる。
殿も腕を組んで静かに頷く。
「弟よ!お目が高いね〜。そだよ、後で2着くらい着替えるんだけどそれも全部、嫁ちゃんが選んでくれてんの。」
ひさは目をキラキラさせて鼻の下を伸ばしていた。
ひさと彼女さんは4年前に出逢ったらしい。
「さすが今をときめくモデルさん。」
自分の彼女を自慢するひさの姿に殿が鼻で笑ってかえす。
「そだ。あとで紹介したい人がいるんだけどまだ来てないみたいだから、来たらまた寄るわ。あんまうろちょろせずに楽しんでいけよ〜。」
ひさは殿にそう言い残して会場から出て行った。
そのあと、会場内にはアナウンスが響き渡り、めでたい結婚式が始まった。
『パンツォーレは ”めでたいね” って意味。主に俺しか使わぬ。』
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