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『なんで置いてっちゃったの』
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『なんで置いてっちゃったの』
式場に戻った俺は、洋風の額縁に入れられた治安の良さそうな絵の下にあったベンチで横になった。
辛い しんどい 吐きそう 痛い
息をするのもしんどくて息を止めて唸ってみたが、ただ苦しいだけだった。
比較的強い薬を飲んでるせいか、頭がボーっとしてくる。
あともう少しで眠りこける というタイミングで手に持っていたままのスマホが震えた。
俺はうぅ〜っ。となんとも言えない声を上げて体を無理に起こし、応答した。
寝る寸前に邪魔されると誰が相手でも怒りたくなる。
不満である。
大変不満である……(恨)
ビデオ通話になっていて、俺は慌てて式場の天井を移しそっとビデオをオフにした。
スマホいっぱいに映っていたのは豪華な海鮮丼とお味噌汁と漬物というお腹が空くような光景だった。
「海鮮丼。夜はカニ食べます。」
彼の声が聞こえた。相変わらず、映っているのは海鮮丼だけだけど、眠たさなんて吹っ飛んだ。
いいな〜。俺も食べたい。食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい「うるせ。」
ひたすらに食べたいと連呼していたら怒られた。
その後呆れたような笑い声が聞こえてお土産買っていこうか?って言われた。
素直に欲しいです。チーズケーキが食べたいです。後なんでもいいので美味しそうなの欲しいです。アレルギー等一切ありません。と告げれば分かった。からと子どもをあやすみたいに言われた。
「ビデオ通話しちゃうほど楽しいんですね。良かったですね。ほんと羨ましい限りですよ。俺の事なんて帰ってきた頃には忘れてるんでしょうよ」
ちょうど俺の座るベンチの目の前にあった絵をビデオで映してみた。
絵のことについては全然分からないが、ここまで表情から感情が伝わるものとは知らなかった。
なんだか死ぬのが惜しく思えた。
この絵の本当の魅力や素晴らしさを何も知らずに死んでいくのかと考えたら式場に飾られてる無数の絵を全部盗んでしまおうかと衝動的に思った。
「なに?構ってやれないからって妬いてんの?可愛いやつだな」
彼はそう言って俺を揶揄ってきたが満更でも無さそうだなって思った。だってなんか嬉しそうだし。
その後続けて それなんの絵?とか 今どこ? とか 、そう言えば今日クリスマスなんだな。とか、いつもなら考えられないほどお喋りで思わず「酔ってる?」って心配になって聞いてしまった。
「さすがにこの時間帯からは飲まねぇよ。ばか。」
まぁそうだよね。って俺は欠伸をした。さすがに眠い。
俺の意志とは関係なく、体が勝手に寝ようとする。
んぅ〜〜〜………眠ぃ 心の中で言ってるつもりが全部口に出てた。
「眠い?昨日寝てないの?」
「寝た。お兄さんの声聞いたら眠くなった。」
「おいおい、オルゴールじゃあるまいし。」
いつもみたいに呆れたようにツッコまれたけど、
大丈夫か?ちゃんと寝ろよ。って、
若いからって夜更かしすんなよ。って、
寒いからちゃんと布団で寝な?って、最後には労ってくれる。
そういうとこ。ほんとすちね。
心配してくれた彼の声に俺は答えたのか、答えてないのか、曖昧な記憶の中で再びベンチで横になった。
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