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「ようこそ、天使の住処へ。」
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「ようこそ、天使の住処へ。」
窓ガラス越しに姿を写し、電話越しに俺は告げる。
"山田 誠" に出会った瞬間だった。
冬のコートに身を包んだカジュアルな服装で整った顔がより引き立って見えた。
"お兄さん"と呼称していた社会人を病院で見るとは思わなかった。
俺の知る中で、兄を超えるほどのイケメンで今までで一番惹かれてる人だ。
「思ったよりも元気そうで良かった。」
彼はそう言って電話を切ったが、それ以上は何も話そうとはしなかった。
俺もこんなはずじゃなかったのに。って思いながら静かに部屋戻ろうか。って飲み切らなかったカフェラテを返却口に返して喫茶店を出た。
「......お兄さんが来るって分かってたらもうちょっとお洒落してきたのにさ」
ほんとひどいもんだよ。と俺は続けてなじった。
二人きりのエレベーターの中で俺の少し前に立つお兄さんは悪かったよ。って言って、でも言い訳するみたいに「今からお前のところ行くわ。って言ってもストーカーと勘違いされて通報されても嫌だろが、俺が。」って俺に同意を求めてきて、そんないつも通りの会話が楽しくて俺はクスクスといつまでも笑っていた。
「あぁ、俺なら通報しかねないね。これが正しかったのかも。」
俺一人だけ、大騒ぎする羽目になってことが済んだんだからさ。って満面の笑みで皮肉れば、困ったように「分が悪い...」と嘆いていた。
それもまた俺にとっては面白い。
誰もいない俺の病室に着いて、椅子がないことに気づいたがお兄さんがベッドの端にでも座るからいいよ。って俺のベッドなのに勝手に座ってこっち座りな。って一人分空いた空間に誘導された。
お兄さんは何を思ったのか、自分のコートを脱いで俺の肩に掛けて、「顔白いけど、寒い?」って手なんか握って来ちゃってさ、ほんと...好きなんか?
「何さ。人肌恋しいの?」
俺は白い目をして彼を睨んだ。そんなことしたら勘違いしてやるぜ?って普段通りに俺はバカなことを言うんだ。雰囲気なんてあったもんじゃない。
冷えすぎた俺の手がじんわりと温もりが伝わってくるのがわかる。
冬は人肌恋しくなる季節だというが、毎度実感させられる。俺が冷え性だということに...。
暖かいお兄さんの手をカイロのようにしてスリスリと遠慮も欠片も無しに熱を奪っていく。
そんな俺の姿をじっと見つめていたお兄さんに「これも生きるためには必要なんだよ、悪いな。」ってどこかのゲームに出て来そうな雑魚キャラの様なセリフを吐けば、お兄さんは可笑しそうに笑った。
「ふっ、お前はかわいいね。気まぐれで。」
え。なんなん?
こいっつ、罪深すぎる。流刑に処してやろうか。あぁ!!!
心中穏やかではない俺をよそにこの人は「実はさ、ゲームで出会った頃からお前のこと知ってたんだよね。」って今になって言うことかよって思いながら呆れながら、何だか面白くなさそうな話が始まるなって苦い顔をした。
それはもう、、、俺たちの素敵な出会いから今に至るまで余す事なく、美化する事なく語るようで?
俺は静かに頷いた。
「ここに辿り着いたってことは、誰かしらと繋がりがあるんだなとは察した。」
今日は一段と寒い。雪でも降りそうだなって午後の空を見て思った。
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